治療手技だけを学ぶのではなくて、過程を学んでほしい

他の作業療法士も同じことを言ってたから、この事を考えているのは僕だけでないと思うが、学生さんや若い理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は理解できていない人も多いと思うので書いてみたい。「PTやOT、STって言うのは、考えることが仕事なんだ!」ってことを言いたいんですよ。

How to を知りたがる若手が多い

世の中は理学療法士や作業療法士が主催する技術系研修会が流行っている。しかもかなりの高額であるにもかかわらず盛況であるようだ。

技術を磨くことはいつものことながら否定しない。大事だ!

でもね、大事なのは

講師をしているセラピストがその技術を身につけた過程

であったり、

その治療手技や技術の利用の仕方なんですよ。

患者さんを目の前にして、右往左往したくないから技術研修を受けてその技術を目の前の患者さんに適用してみるってことは悪い事ではないと思うし、それで改善するならいいことだ。

でも、研修会で講師を務めると

「概論的なことではなくて、もっと具体的なことを知りたい」

みたいな、具体的な事例を挙げてきてアドバイスを求められることが多い。それこそ、ピンポイントな「How to」を求められます。

疾患によっては、もしくは治療対象としているような障害像によっては

まずあれをして、次にこれをすればばっちりですよ!

みたいなこともあるかもしれませんが、たいていの患者さんは千差万別で一人ひとり抱えている問題は異なる。それに対して、全てを解決できるような魔法みたいなHow toはないんですよ。

もっと考えて、考えてアプローチする

  • Aという状態に対してBというアプローチをする
  • Cという状態に対してDというアプローチをする

技術研修全盛なのは、こういうのをきっと求められているのでしょうね。

しかし、これって考えることを放棄しているのと同じじゃあないのかな?

  • Aという状態に対してBというアプローチをする

そういったものも少しはあるでしょう。でも、多くの患者さんにはなかなかそのようなパターンはない。その患者さんの個人因子であったり、環境因子はそれぞれ異なるのだから、まるっきり同じ治療法でいいとはいかないと思う。

だから、「Aという状態に対して、本当にBというアプローチをすべきなのか?ほかの選択肢はないのか?」みたいな思考を経てBを選択するなら理解できる、しかし、その思考をせずにBだけを実施するというのは適切ではない。

だから、

「若いセラピストに学んでほしいのは、その患者さんにそのアプローチをするに至ったセラピストの思考過程」

なんですよ。そこが一番大事なことで、それをしっかり理解することができれば、多くの患者さんを目の前にしたって焦ることはない。

ある学会での出来事

私は、いわゆる○○法と呼ばれているアプローチの一つである、ボバースアプローチを学んでいる者の一人です。子供が生まれるまでは、結構しっかり研修も受けておりましたので、一応NDT(成人、小児)の基礎コースは終了しております。

だから、ボバース系の講師の方の研修会はそこそこ受けているし、一緒にお酒も飲んだりしている。

そうすると、学会発表などを聞いていると、ボバース系の研修会を受けたり、勉強会に参加しているんだろうなって雰囲気のある演題があるとピンってくる。

実際に、発表後に名刺交換などをすると研修を受けているという事実が判明するから、私の勘はかなりの確率で当たっている。

そんな発表の中で、明らかにボバース系の学びをしている演者がおられて、ちょっとびっくりするような発表をしていたことがあった。

シングルケーススタディー形式の報告だったのだが、「治療期間わずか1日」での治療前後の比較で、比較の内容が臥位姿勢の微妙な変化のことであって、ADLの変化は論じられていなかった。

演者は、どのようなアプローチをしてどのような変化があったのかってことを伝えたかったようだ。

だが、治療期間一日での治療前後の比較では妥当性は低いと思う。研修会で学んだことの手技をそのまま適用してその結果を発表したかったようである。

もっと考えて考えてアプローチしてよ!

非常にショックを受けた。研修で学んだことの内容を誤解しているのではないかと思ったからだ。

発表後、フロアーで確認するとやはり研修を受けておられた事が判明した。

  • 一日だけでの治療での変化は乏しいと思う
  • 姿勢が変化しただけではなく、ADLにどのような影響を与えたのか吟味すべき
  • 治療の内容についてもっと吟味してほしい

というような内容を直接お伝えしたのだが、ちょっと本人はうなずきながらも憤慨しておられた。

学んだことを実践して、その結果を発表することが間違っているのか!

学んだことを実践して結果を発表することは間違っていないが、学んだことを正しく理解せずに臨床の場に用いて、患者さんの変化を、ADLにまったく影響を与えていないような微妙な姿勢の変化を論じるだけでは、きちんとした学びになっていないのです。

このことがあって依頼、手技中心の研修会に積極的に参加している若手セラピストをみると心配でならないのです。

先輩の頭の中を見てほしい

優秀な先輩セラピストがあなたの身近にいるなら

治療手技を教えてもらうだけではなくて

  • 何故その治療を選択したのか
  • 作業療法士ならなぜそのactivityを選択したのか
  • なぜ、そのような治療環境を選択したのか
  • なぜ、今そのタイミングでその治療をするのか

そこをぜひ学んでほしい。僕らはいつも考えて考えてアプローチしているのだから、その結果のところだけを学んでほしいのではないのですよ。

結果を伝える研修会ではなくて過程を伝えることの研修会の必要性を強く感じている。

私が受講した研修会で講師をされるベテランセラピストは

日々思考している、日々試行錯誤している、日々いろいろ試行している、日々自問自答している。

その積み重ねがいろいろな治療技術の向上につながっているのであって、漫然と画一的なアプローチを実施しているわけではないのである。

そんな頭の中をのぞくことのできるような研修会をもっと開催してみたい。