住宅改修の考え方

回復期リハビリテーション病院での退院前指導とか、訪問リハビリの現場では理学療法士や作業療法士が患者さんの住宅改修で頭を悩ませていることも多いと思う。身体に何らかの障害がある方の場合の、住宅改修のすごく基本的な考え方について書いてみた。住宅改修に関わっている、ケアマネジャーさんや住宅改修に関わっているプランナーさん、リフォーム業者さんにも読んでいただけたら幸いです。

住宅改修する範囲・場所

経済的に余裕があって、住宅改修にお金をいくらでもつぎ込むことができるなんて患者さんは少ないと思う。それに、

「費用はいくらかかってもかまわないから、いい改修を提案してほしい」

って言われてもちょっと困ってしまうよね。大金つぎ込んで住宅改修したのに、実際に住んでみたらうまくいかなかったってことになってしまったら、もの凄く責任を感じるというか、申し訳ないという気持ちになるんだろう。

私これまでの経験で、250万円くらいの住宅改修に関わったことがある。それが私の作業療法士人生で今の時点では最高額の住宅改修だ。

だから、改修に入る前にしっかりとどの部分の改修が必要なのかってことをじっくり吟味して、費用対効果を考える必要がある。

基本的にまず考える住宅改修の範囲としては

  • 1 house(家全体)
  • 1 floor(1フロアーのみ)
  • 1 room(1部屋のみ)

この3つを考える必要がある。

生活範囲は家の中のどこになる?

担当している患者さんや利用者さんの状態にもよるが、自宅での生活範囲が家の中のどこになるのかってことをまず考える必要がある。

1 room
非常に重度な患者さんで、主治医の往診や、訪問介護や訪問看護などのサービスを使いながら寝たきりのような生活となる場合は、家のあちこちを改修することによるメリットは少ない。

患者さんの本人のベッドを置くことになる部屋回りを中心に、介護しやすいようにすることが必要になってくる。間取りや、ベッドの位置関係などをしっかりと考えたい。

1 floor
患者さんが車いすにしろ、杖歩行にしろ屋内を移動することができる、もしくは屋内を移動する必要がある場合は、患者さんのベッドを置くことになる居室を中心としたfloorの改修を考えることになる。

居室を中心とした動線として、トイレ、浴室、リビングなどへの移動に伴う段差や敷居、扉の出入りなどを考える必要がある。

1 house
患者さんが家の中で、上下の移動をする必要がある場合は複数のフロアーの改修をすることになる。とくに、1階が店舗で2階が居室のケースや傾斜に建っている住宅で、1階は駐車場や階段で、2階が居室というケースのような場合、玄関から2階への移動に対しての改修を検討する必要がある。

その行為の回数や介助負担の軽減を検討する

住宅改修でよく提案する場所としては

  • 玄関
  • トイレ
  • 風呂、浴室
  • 廊下や階段の手すり
  • リビング

このような場所が多い。これらはその場所を活用して行う「行為」に関連している場所だ。

トイレは排泄動作、風呂は入浴動作、廊下や階段は屋内移動、そういった生活行為に対しての支援として住宅改修を検討する。

しかし、それらの「行為」を一人で行うことができる患者さんの場合と、介助して行う場合では住宅改修に関しての考え方も変わってくる。

行為の介助負担を考える

患者さんの状態にもよるが、1日1回の入浴であっても、入浴に対しての介助負担は大きい。トイレ動作は、1日に何回も行わなくてはならない。

だから、入浴については訪問入浴の活用や、デイサービスでの入浴を利用することで、自宅のお風呂を使わないという選択肢もある。そうなると自宅のお風呂の改修は必要ない。

また、毎回トイレの介助をすることは難しいからベッドサイドにポータブルトイレを設置しておむつも併用する。その代り、入浴については毎日なんとか家の風呂でゆっくりとお湯につからせたいというような場合には、トイレや移動のための改修はせずに、お風呂の改修を優先して行ったりするケースもある。

住宅改修の目的は、本人の残存機能を生かすための改修もあれば、家族の介助負担の軽減のための改修もある。

介助負担軽減の場合、本人や家族が自宅でどのような生活スタイルをしたいのかという考え方が大きく影響してくる。とくに、住宅改修の費用に限りがある場合は、改修する場所をしっかりと絞る必要がある。

マンパワーを考える

行為の介助量の軽減と同じく検討すべきことが、その家庭内でのマンパワーだ。人手ですね。

  • 日中は独居だけど、夕方からは同居家族がいる
  • 自宅で商売をやっているから日中でも家族が介護できる
  • 独居で手伝ってもらえる家族はいない

条件によって、介護できる家族がいる時間帯や人数は異なってくる。それによって、介護負担を軽減すべき行為も変わってくる。日中に独居状態となってくるのであれば、トイレの改修をすることで、何とか一人でも排泄行為をできるようにしなければならないということもある。

独居だから日中はデイサービスに行く必要があるなら、玄関周囲の改修を行って送迎してもらいやすいように工夫しなければならないということも生じる。そういったふうにマンパワーを検討する必要がある。

生活の習慣を考える

生活習慣やスケジュールっていうのは患者さんによって異なる。

たとえば仏壇だ。
仏壇に毎日線香をあげて手を合わせる習慣がある患者さんなら、できることなら居室のあるフロアーに仏壇も置いておきたい。仏壇が異なるフロアーにあると、一人で上り下りするのが大変な階段を無理してまで仏壇に行こうとする患者さんもいるんです。

そうなるなら、階段の改修をする事より、仏壇の場所を変えるほうが効果的だ。

  • Daily デイリースケジュール
  • Weekly ウィークリースケジュール
  • Monthly マンスリースケジュール

それぞれの生活習慣を把握し、その患者さんに必要な行為の回数を検討することで、住宅改修の費用対効果を効率的に考えることができる。

月1回の外出のために、玄関を改修するくらいなら外出の時に訪問介護のヘルパーさんに来てもらうほうが費用対効果という点では効果的でもある。

同居している家族のことも考える

和式トイレに洋式便座をかぶせて簡易的に改修することもある。だけど、同居している孫が便座の位置が高くなりすぎてトイレを使えなくなって、孫がトイレを使うたびにかぶせている便座を外さなければならなくなった。

こんな経験をしたことはありませんか?

電動ベッドを設置したら、遊びに来た孫のおもちゃになってしまった。

住宅改修や福祉用品の導入では、必ず同居している家族のことも考えて対応してほしい。

その家に暮らしているのは障害を持っている患者さんだけではない。特に小さな子供さんが同居しているような場合には、そのことも配慮して検討してほしい。

細かな住宅改修の中身を検討する前に、せめてこれくらいのことを検討したうえで個々の住宅改修を考えるようにしてほしい。

そのような習慣を身につけることで、より対象者の状態に合わせた住宅改修のプランを考えることができるようになる。

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やまだリハビリテーション研究所noteサイト

2018年同時改定や2025年問題、地域包括ケアシステム、子どものリハビリテーション、そんなテーマでさらに価値あるコラムを書いています。

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