訪問看護にしろ訪問リハビリにしろ、小児への関わりは充実しているとは言えない。そこで、作業療法士の筆者が主宰しているやまだリハビリテーション研究所での研修会内容を少しずつ公開してみたい。この領域への参画が増えることを期待したい。今回は初回のオリエンテーションで家族に伝える内容をまとめてみました。
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家族、とくに母親との関わり
対象児の年齢が小さければ小さいほど、対象児の状態が重度であれば重度であるほど、本人とのコミュニケーションが難しくなる。だから、対象児の養育者である両親や祖父母、とりわけ母親との関わりが重要になってくる。
この領域への関わりのむずかしさの一つに、「母親とのかかわり」の難しさを上げている方もいるほど関係の取り方が難しいと思われているようです。
しかし、高齢者の訪問でも、難病の方の訪問でも本人だけでなく、家族とのかかわりがあると思いますが、こちらはうまくできているのでしょうか?
対象が小児だからというだけで、「家族とのかかわりが難しい」と考えるのは単純な思い込みではないでしょうか?
だから、初回のオリエンテーションで家族の雰囲気をつかんでおくことは大事な事なんです。
初回訪問ですること
小児領域の訪問看護や訪問リハビリを実践している事業所は少数であり、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のリハビリテーションも医療業界という視点で見れば少数派の職種であるためリハビリテーションそのものの説明を初回でおこなう必要があったりする。
私が実施しているオリエンテーションは次のような内容です。
費用に関する事の説明
- 頻度
- 回数
- 期間
- 1回あたりの時間
一般的な訪問でのオリエンテーションと同じです。小児の場合、多くのケースは初めて訪問によるサービスを受けることになるので、このような事も説明もしっかりと行います。
支援体制の状況の確認
- かかりつけ医
- 担当保健所や保健師
- サービス利用機関
医療保険で訪問する場合、介護保険と異なり、ケアマネジャー的にサービスの利用を調整する人材はいません。自治体によっては保健師さんがその役割を担って入りる場合もありますが、十分であるとは言えません。
特に、医療保険による訪問看護ステーションの利用では、指定されている一部の疾患をのぞいて2か所以上の訪問看護ステーションは利用することができません。このような事は家族さんはご存じないことがほとんどです。すでに訪問している事業所があるかどうかの確認はしっかりとしましょう。
トラブルになりやすいパターンとしては、すでに訪問看護ステーションが看護師による訪問を行っていて、リハビリを他事業所の訪問看護ステーションからの訪問で追加するような場合に2か所以上となってしまい、疾患によってはどちらか一方を選択しなければならないことがあります。
保健師や行政の職員もこのことを知らない場合があり、時折トラブルとなります。
同居以外の家族の協力状況
対象児が重症であるケース、人工呼吸器などを装着しているケースでは家族は24時間体制の介護を行う事になります。一般的な家庭では、母親か介護をして父親は働いているというパターンが多く、母親への負担が大きくなります。
人工呼吸器を装着していると母親は外出もできません。そのため、近隣に協力してもらえる人がいないかどうかということは非常に大事なのです。
特に祖父母の協力が得られるのかどうかということは重要です。
急変時の対応病院
重症児の場合、急変したときに搬送される病院が決まっていることがほとんどですが、その場合の体制を確認しておきましょう。
24時間対応している訪問看護ステーションは特にその場合の対応を決めておくほうが良いと思います。
家族の状況の確認
- 兄弟の有無と年齢
- 家族の医療的知識や対応可能な技量
- 父や母の出身地
訪問先でいつも聞いている事柄です。
兄弟の有無は必ず確認しています。
特に対象児が第2子以降の場合、対象児よりも年長の兄弟のフォローを母親や父親がきちんと行えているかどうかをそれとなく確認します。
どうしても、重症であればあるほど対象児のみに家族の関心が向きやすくなっていて、兄弟へのかかわりが薄くなることがあります。訪問時などに兄弟の様子も観察の対象となります。
父や母の出身地を聞くことはプライバシーの問題もあるのかもしれませんが、私は確認することが多いです。
特に、転勤族などのケースでは、近所に知人や友人もおらず、祖父母の協力も得られず、育児の悩みなどを相談できる人物が近くにいないというケースも多いのです。
また、私は大阪人なので大阪弁をしゃべりますが、地方から大阪に来た人の中には大阪弁のしゃべり方は「きつい」と感じる方もおられるので、ちょっと意識した会話を心がけています。
義肢装具関連の給付についての説明
将来的に車いすや座位保持装置が必要となることが予測される場合に説明します。
家族にとっては自宅まで訪問に来てもらえることは大変便利なのですが、訪問だけでは対応することが難しいのが車いすや座位保持装置などの作成に関することです。
一般的には病院や肢体不自由児の通園施設、特別支援学校などで処方されます。ですので、訪問以外の事業所とのかかわりもきちんと行っておいていただかないと、車いすなどを作成する段階になって困ることになります。
きちんと訪問以外の機関との関係を保っていただくことをお伝えしています。
リハビリテーションに関する説明
年齢が小さいほどリハビリテーションを受けていないケースも多いようです。だから、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の方はリハビリテーションそのものの説明をきちんと行う事が必要です。
リハビリテーションは万能ではない事
リハビリテーションにも限界はあります。
多くの家族からほぼ100%聞かれることは
- リハビリテーションを行えば歩けるようになるのか
- リハビリをすれば正常発達するのか
- リハビリをすればどう変わるのか
初回訪問で聞かれることが多いですね。だから初回で説明することが多いです。
リハビリテーションを実施すれば、100%家族が望む状態になるわけではない
辛いことですが、この事実は最初に伝えるようにしています。ここをしっかり伝えておかないと
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が考えていることと家族が期待していることとのギャップがどんどん大きくなっていく可能性があるからです。そのギャップは時間がたてばたつほど大きくなるものです。
だから、最初の時期にボタンを掛け違えることがないようしっかりと説明します。
リハビリを実施してみないとどのように変化するか、何ができるようになるかわかりません
私がオリエンテーションでよくお伝えしていることです。家族の期待を裏切るような言葉かもしれませんが、占い師や預言者ではないので、本当のことを伝えています。
リハビリテーションの範囲
看護師、往診医、通院先の主治医、保健師、ヘルパーなどなど、多くの事業所や職種が支えていくケースも多いです。介護保険のケアマネジャーのような役割のスタッフはいないのが医療保険の訪問です。
家族さん、特に母親にしてみれば
「この課題や悩みはいったいどの人に相談すれば一番いいのか?」
って困っている方もいるようです。
だから、リハビリテーションの範囲はどこまでなのかってことを説明するように心がけています。
誰に相談していいのかわからない場合は、とりあえず私に何でも聞いてください。
とお伝えしています。私に相談されて対応できない場合は、他の職種、他の事業所に連絡を取ることにしています。誰かが、マネジメントしないといけないからです。できる人がマネジメントするってことですね。
初回訪問ではだいたい以上のようなことをお伝えしています。参考になれば幸いです。
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