回復期リハビリテーション病棟で働く嫁を持つ作業療法士として、回復期リハビリテーション病棟での理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリスタッフが看護師さんとうまく連携するにはどうすべきかということを書いてみる。
回復期リハビリテーション病院の主役とは
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の中には
回復期リハビリテーション病棟での中心的役割を担っているのは自分たちだ!
という自負を持っておられるリハビリスタッフの方もいるかと思います。そのことを否定はしませんが、適切ではないと思います。回復期ビリテーション病棟でリハビリテーションの中心を担っているのは理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、看護師、医師等の特定の職種ではありません。
多くの職種を包括したリハビリテーションチームが回復期リハビリテーション病棟の主役なのです。
人員配置のこと
下記の図は、厚生労働省の平成24年度の診療報酬改定資料からの抜粋です。回復期リハビリテーション病棟での人員配置などが明記されています。(クリックすると大きくなります)
この中には、医師、看護師、看護助手、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、などの職種が明記されており、これらの職種がそろっていることが回復期リハビリテーション病棟の必要条件なのです。このことからも、回復期リハビリテーション病棟がチームとして動かなければならないということがわかるかと思います。
回復期リハでは看護師さんの役割が重要
認定看護師の制度とカリキュラム
看護師の卒後教育の制度に、認定看護師や専門看護師というものがあります。理学療法士や作業療法士も同じような名称の卒後教育をそれぞれの協会が実施していますが、その教育の内容やレベルは看護師の方がはるかに高いということを理学療法士は作業療法士の皆さんはあまりご存じないかと思います。その領域や教育内容については 看護協会のHP からご確認いただけますので、興味のある方は一度ご覧下さい。
その認定看護師の一つの領域の中に 脳卒中リハビリテーション看護 というものがありそのカリキュラムの中には
- 早期離床と日常生活活動自立に向けた支援技術
- 生活再構築のための支援技術
この2つの支援技術は、看護師もリハビリテーションへの関わりを行うということを示しています。リハビリテーションというものは決して、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士だけが実施するものではないという事なのです。
残りの21時間の生活は看護師が対応する
回復期リハビリテーション病棟では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は1日あたり最大各1時間、合計3時間のマンツーマンの個別のリハビリテーションを実施できます。
このことが、リハビリテーションの主役は自分たちだという誤解を招いているのではないかと私は危惧しています。
確かに一つの職種がマンツーマンで1時間も患者さんと個別に接することは他にはないことです。 しかし、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がマンツーマンで接するのは一日あたり最大でも3時間でしかないのです。残りの21時間は病棟で過ごすことになるので、そこでの関わりは看護師や介護職の方が中心になって対応しているのが、現在の回復期リハビリテーション病棟のシステムだと思います。
だからこそ、残りの21時間の生活を充実させるためにも理学療法士や作業療法士、言語聴覚士との連携が必要となってくるのです。
看護師との連携のポイント
他の記事でも書いていますが、病棟の看護師さんや介護職の方と連携するといっても、一方的に
「○○さんの更衣介助はこの方法でお願いします」
とだけ伝えるというのは連携でも何でもなく、単なる 業務の押し付け でしかありません。これだけで、連携をしたと思って自己満足している理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も多いように思います。
連携に重要なのは
- 他職種の業務スケジュールや業務内容を知る
- 相手の業務の中にリハビリテーションを組み入れてもらう
- わかりやすく伝える
この3点が重要なんです。このことを理解していないと単なる 連携もどき・押し付け のような連携となってしまいます。
他職種の業務スケジュールや業務内容を知る
たとえば理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は患者さんが出来ない動作を、時間をかけて見守っている場面があってもその行動が非難されることはありません。
しかし、病棟で働く看護師さんや介護職の方、特に介護職の方は患者さんが出来ない動作を介助することが業務でもあるので、理学療法士や作業療法士のように患者さんの横で見守っていると
患者さんから叱られる
ということもあるのです。
また、マンツーマンで仕事をするのが理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のしごとですが、看護師さんや介護職の方はチームで仕事をこなします。一人の患者さんにマンツーマンでつきっきりで仕事する時間は限られています。
また、時間帯によっては職員数が少ない時間もあり、介助したりする時間が取れないこともあるのです。
他職種の業務にリハビリテーションを組み入れてもらう
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士がマンツーマンで行っていることの再現を他職種が病棟で行う事はかなり難しいのが現在の回復期リハビリテーション病棟の状況です。
看護師や介護職の方のスケジュールや業務パターンなどをきちんと理解したうえで
- 今病棟で実施してほしい事の優先順位をつける
- 病棟でのスケジュールに応じた連携をする
特に病棟で患者さんのADL能力の向上を図るための取り組みを、看護師さんや介護職に依頼することになることが多いと思います。その時でも、
- 今最も力を入れてほしい部分はどこか?
- せめてここだけでも、こんな風にして欲しい!
というように、まずこれだけでも病棟で実践してほしい! という部分をしっかりとピックアップすることが重要なんです。
くれぐれも、リハビリの時間にマンツーマンでやっていることをそのまま押し付けることのないように工夫してみてください。
わかりやすく伝える
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の中には、カンファレンスやミーティングで他職種に対して専門用語を並べ立てて自己満足している人を見かけます。
専門用語は適切に用いるべきで、他職種に自分の能力の高さを見せつけるために用いるものではありません。カンファレンスやミーティングでは他職種に理解してもらうために伝えることが必要なので、難解な専門用語を羅列することが必ずしも効果的ではないのです。
相手にきちんとわかりやすく伝える
このことが連携の基本なんです。あなたの説明はきちんと看護師さんや介護職に方に伝わっていますか?
まとめ
- 回復期リハビリテーション病棟の主役はチームである
- 多職種間の連携が必要である
- 病棟でのADL改善のためには看護とリハビリ間の連携が特に重要である
あなたが看護師ならこちらのサイトもどうぞ
・看護とリハビリの連携を考えるサイト 看護―リハビリ LABO
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