3月1日の投稿で事業所内連係は「横から口を出すこと」が肝心だってことを書いてみた。じゃあ、具体的にどんなふうにするのかってことを書いてみた。今回は、リクライニングする車椅子でのポジショニングをどう工夫するのかってことを事業所内スタッフと検討したのでそのことを書いてみる。「横から口を出す勇気」の実例です
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登場人物と経緯
週1回のみ勤務している事業所でのことです。
その事業所は、訪問看護ステーション、居宅介護支援(ケアマネ)、福祉用品レンタル・住宅改修、訪問介護(ヘルパー)の各部門が一つの事務所に同居しています。私が出勤している曜日は20人くらいのスタッフが出入りしています。
今回の記事で登場するのは、福祉用品レンタルチーム3名、作業療法士の私、ケアマネジャーとなります。
リクライニングする車椅子のことで・・・
昼休みにコーヒーでも飲もうかなって思って、廊下を横切ってコーヒーメーカーのある給湯室に行こうとすると、廊下の端っこで福祉用品レンタルチームの3人が車椅子と、ポジショニング用の背もたれや座面用のクッションを使って何やらディスカッションしています。
「何してんの」と私
すると、福祉用品チームの一人から
「リクライニング型車いすの利用者さんが、リクライニングさせるとお尻が前にずれて違和感があると担当ケアマネジャー(同じ事務所)から話があり、何とかならないかといろいろ検討してます」
ここで、横から口を出しました。面白そうなこと検討しているから、コーヒー片手に私も混ぜてもらいました。
前ずれについてのプチカンファレンス
突然福祉用品チームのディスカッションに割り込んだので、状況把握するために利用者さんのことを聞いてみました。
- 利用者さんは大柄で体重も重い
- 自力での姿勢変換は難しい
- 車椅子はご家族が購入してきたもの
- リクライニングを倒すと、お尻が前にずれてしまって気持ち悪いとの訴え
そもそも、今ディスカッションしながら目の前に置いてある車椅子は利用者さんが使っている者とは全く違うタイプ。私たちの事業所からレンタルしたものを利用者さんが使っている者ではないってこと。だけど、同僚のケアマネジャーから「お尻の前ずれ」について相談を受けたので検討中だったんですよね。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の方ならこんな方の車いすのポジショニングにどんなアドバイスしますか?
前ずれに対してのアドバイス
車椅子をリクライニングすると前ずれは必ず生じる。それを避けるにはチルト機構のある車椅子を利用するほうがポジショニングはしやすいんだけど、この方が利用している車いすはリクライングできるけど、チルト出来ないタイプ。だからどうしても前ずれは生じます。
お尻が後方に落ち込むように、座面を前上がりにするようなクッションの利用や車いすの変更などを検討していました。
私からは、車椅子の変更が無理な場合リクライニングするとお尻が前ずれするのは避けられないことを伝えました。だって、後方に傾けるとどうしてもお尻には前にずれるような力が働きますからね。
クッション使ってもずれる可能性があるので、座面にスベリ止めシートを敷くことを提案しました。
ただスベリ止めシートを敷くと見た目上お尻はずれにくいけど、ズボンが食い込んだようになる可能性も伝えました。
さあ、これで作業療法士としてのアドバイスは終了!
いえいえ、こんなんじゃあまったく中途半端、ダメなんですよ。
より効果的な事業所内連係のために実践したこと
福祉用品レンタルチームに作業療法士として助言するだけではこのケースの連携としては不十分なのです。
その理由は
- 担当ケアマネジャーも同僚である事
- 訪問看護師も同じ事業所の同僚である事
非常に重要なのはこの2点なんです。
作業療法士と福祉用品レンタルチームだけでディスカッションを終わっていてはダメなんです。っていうよりもったいない。
座面のことを工夫するうえで大事なことは滑らない事だけではないんです。
担当ケアマネジャーも交えてディスカッション
昼ご飯食べている途中だった、担当ケアマネジャーにも声をかけて、ディスカッションに参加してもらいます。
そして、先ほどのスベリ止めシートの利用についても伝えます。その上で、担当ケアマネジャーに伝えました。
- スベリ止めなどで座面の工夫はできる。
だけどお尻を滑らせないってことは車椅子を利用する時間によっては、同じところに圧がかかり褥瘡の要因になる可能性がある。
訪問看護を担当している看護師とも協力して訪問時にお尻や仙骨部の皮膚状態の確認が必要になる
- 同じ理由から、デイサービスで入浴するときにもお尻の状態を確認してほしいという点を、ケアマネジャーからデイのスタッフに伝えてほしい
前ずれを無理に止めようとすると、お尻に圧力がかかる可能性があるからそのことをふまえてどうするかってこともケアマネジャーさんに知っておいてもらう必要があるんですよ。
だからケアマネジャーさんにも参加してもらってこのディスカッションしないと意味がないんですよ。
ここまでに要した時間は20分でした。
多職種だからこそ!連携すべき
同じ事業所に多職種がいる。
リハビリ、ケアマネジャー、福祉用品レンタル、ヘルパー、看護師。こんなにいるんです。
しかも、同じ利用者さんを複数の職種で担当していることなんてしょっちゅうあります。それなのに、事業所内で何の連携もせず日常業務をこなしているだけだってことが多くの事業所で展開されていると思います。
そんなことはもったいない。
今回のような、お昼休みを使った20分程度のディスカッションをもっともっと展開することができたら、素晴らしい多職種連携ができるはず。
リハビリが連携の中心になれる
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がその多職種連携の中心になれるんです。
今回のような、多職種に対してリハビリテーションの観点から多くのスタッフを巻き込んだようなチームアプローチを展開することが2015年の介護報酬の改定では盛り込まれています。
リハビリテーションマネジメント加算2(II)がそれに該当します。
だけど、この連携は本来は加算があろうとなかろうと理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が普段からしておくべきことなのです。
同僚と普段から積極的な連携が出来ないような理学療法士や作業療法士や言語聴覚士が、他事業所のスタッフとの連携を率先して行うなんてことはきっとできない。
あなたは普段から同僚とチームアプローチを展開できていますか?
まず始めるべきはそこからなんですよ。
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