ワンストップサービスのために情報共有するのは当たり前。それだけでは法人内で複数のサービスを提供しているメリットは薄くなってきている。医療・介護複数のサービスを提供することのできる法人は、これからを見据えての教育システムの構築が必要になってきた。作業療法士として、リハビリテーションの視点から必要な対策を検討してみた。
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ワンストップサービスのこと
いまや、大手の医療法人になると医療保険、介護保険、福祉系サービスなどなど様々な事業所を運営している。
急性期や回復期は病院で、病院を退院したら介護保険のサービスを提供して、必要な利用者さんに対しては総合支援法などを中心とした福祉系サービスを提供するというような、1つの法人ですべてのサービスを提供する。
1つの法人が窓口になって様々なサービスを提供する、そういう意味でワンストップサービスを実践している医療系法人は多い。
これまでの連携
このような大規模法人でこれまで実践されてきたのは、1人の利用者さんの情報を共有することだ。
このサイトでも、病院から介護系施設に転院する利用者さんの情報の共有の重要性については記事にしてきた。
だけど、この記事で強調したいのは、2015年6月現在では情報共有の連携だけでは不十分になりつつあるってことだ。
2015年の介護報酬改定でわかることは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のマネージメント能力が重要視されてきていることだ。
特に多職種連携においてのリーダーシップが求められている。だけど、そのことに気づいているのは介護保険領域のセラピストでもまだまだごく一部だろう。管理職任せにしている若手セラピストも多いだろう。
また、病院に勤務しているセラピストにとっての多職種連携は、あくまでも同じ病院内での連携であって院外との連携ではない。
院内の多職種連携は、院外での多職種連携に比べて連携しやすいのが特徴だ。
- 周囲も専門職だけなので専門用語が通じる
- 普段から顔を合わせてるから意思疎通が図りやすい
こんな感じなので、院内でリーダーシップを発揮できているセラピストがいたとしてもそれはあくまでも院内の環境においての出来事なんだ。
だから、院内でリーダーシップを発揮しているセラピストが、院外でリーダーシップを発揮できるとは限らない。
院外連携は難しい
介護保険領域での連携を中心とした、院外での連携の場合は連携の相手は同じ法人の職員とは限らないし、医療専門職でないスタッフも多い。だから、院内連携ほどスムースにいかない。
- 専門用語が通じない
- 医療系ではない職種も多い
- リハビリテーションのことを知らない方も多い
それこそ、理学療法士と作業療法士の違いを知らない方も多い。だから、院内連携とは異なる関わりをしなければスムースな連携などできない。専門用語連発して偉そうにしているセラピストなど地域リハビリテーションでは必要ないんだ。
地域でのノウハウを蓄積する必要がある
法人内の介護保険領域や福祉系領域で働いている、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士はそのあたりのことを理解している。(誤解している人もいるけどね)
また、法人内のケアマネジャーは多職種連携の必要性をきっと理解している。
そういった法人内での地域での連携の重要性をきちんと理解しているスタッフを中心にして、地域連携に必要なノウハウを蓄積することが重要なんだ。
たとえば、地域リハビリでは住宅改修にかかわることも多い。退院時に住宅改修を終えている患者さんもいる。
だけど、回復リハビリテーションのスタッフは自分がかかわった住宅改修が1年後や2年後にどのように利用されているのかってことまでは把握していない。だけど、地域リハビリテーションにかかわっているスタッフは現在進行形でその住宅改修の結果を把握しているはずだ。
その結果をきちんと蓄積しているだろうか。また、蓄積している結果を病院スタッフにフィードバックする機会はあるだろうか?
これからの時代は、地域で得たノウハウを院内スタッフにフィードバックするような連携をしている法人が生き残る。
蓄積すべきことは山ほどある
地域で働いているスタッフには当たり前のことでも、病院で働いている同職種のスタッフが知らないことはたくさんある。
前述した住宅改修のこともそうだが、それ以外にも
- 法人外連携のコツ
- ケアマネジャーとの連携
- 他事業所との連携
- 他院の医師との連携
こういったノウハウを、フィーリングではなくきちんと言葉で蓄積していく必要がある。
新たな連携体制の構築
法人内の連携といえば、これまでは患者さんの情報共有が中心でした。
しかし、これからのワンストップサービス時代を生き残る大規模法人の連携体制は患者さんの情報共有だけでは不十分なんです。
地域リハビリを担っている事業所のノウハウを病院のスタッフが共有することが必要になってきます。
そうして、すでにこのような研修会や情報交換を法人内で積極的に実践しているという病院も出てきています。
収入にならない活動に対しての法人の認識
法人内での情報交換や、蓄積されたノウハウを共有するための定期的な勉強会などの開催は、すぐに収益に結び付くわけではない。むしろ業務時間内にこのようなことを実践すれば、減収になることも予測される。
だから、このような活動に関しては法人幹部の協力が不可欠になってくるだろう。法人幹部が地域での高齢者へのサービスをどのようにとらえているのかってことが試されているのだと思う。
収入にならないことに積極的に取り組むことが、法人全体のレベルアップにつながるのではないだろうか。
情報共有という連携から、ノウハウの蓄積とその共有という段階への変化が求められている。
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