先日研修会の講師依頼をいただいた団体の方と打ち合わせしているときに思ったこと。いろんな領域を経験して、自分は回復期リハでしっかりやりたいっていうならわかるんだけど、回復期リハしか経験していないのに、異動とかの話になると「訪問はできません」っていうのはチョッとどうなのかって思うんですよね。そんなことを書いた。
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病院でしか働けないなんて!
ゼネラリストorスペシャリストあなたはどっち?
という記事を書いたのですが、けっこう読んでもらえました。
スペシャリストだからと言って、他のことができないってわけではないと思う。
でもね、
色んな部署がある大規模法人で、回復期リハから訪問リハへの異動とか、他の部署への移動を打診されたときに
- 回復期以外への移動は嫌なんです
- 訪問リハビリはできません
- 通所で何やったらいいのかわかりません
- 老健なんて行きたくありません
っていうような若手セラピストがいるらしい。
自分の意見を言うのは大事だと思うけど、ちょっと違う部分もあるんじゃあないのかなって思う。そんなのはスペシャリストでさえないって思うんですよね。たぶん何か勘違いしている。
僕の見解
このことに対して僕にはいくつかの考えがある、
1つは
これからの改定で回復期リハの人員は余剰になるから、問答無用で異動させられる可能性がある。
もう一つは
特定の領域でしか仕事ができないっていうのはセラピストとして能力不足だ。
ってこと。
多角経営とか兼務とかになる
これから先、回復期リハビリテーション病棟を抱えている法人さんは病院部門だけでは収益を伸ばすことはできなくなるでしょうね。
9単位のリハビリを算定できるなんてもう無理だよ。
そうなると、余剰人員となるリハビリテーション専門職が出てくるから、訪問リハビリ部門とか訪問看護ステーションとか老健とかを立ち上げたりする法人が増えるでしょう。
そうなったときに異動となるのは必然。異動するのが嫌で退職したところでほかの医療法人さんも同じような状況なんだから、どこに行っても同じなんだよ。回復期リハ病棟が始まった時代には少なかった回リハ病棟も今では至る所にあるって状況だ。だから、回リハの人員を縮小して訪問リハとか通所に異動させるってところも多くなる。今は少なくても、そうしないと対応できなくなる時代はすぐにやってくる。
多角経営っていうか、利用者さんの立場になれば
色んな選択肢があって、自分に必要なものを選べるところがいい
そうなると異動も多くなるし、兼務することも多くなる。病棟と訪問兼務って人も出てくるのではないでしょうか?
そう異動することが前提で働くことになるんですよ。
特定のことしかできないセラピストなんていらない
回復期リハ病棟いれば在宅の利用者さんの様子なんてわからない、訪問だけしていれば回復期リハでやっていることはわからない。
だから、いろんなところで経験を積んだ方がセラピストとしての魅力はアップする。どっちか一方しかできないセラピストっていうのはイマイチなんだよ。
若手の多くが病棟で働きたい理由は、先輩セラピストに囲まれていたりする安心感とか、急変時の対応が何とななるとかってことなんだろう。
【新人・若手の悩み?】地域vs回復期 学ぶことに差はあるの?
勉強なんてどこででもできる。1人職場の人でも勉強して研鑽している人はいる。
まわりに誰かいないと勉強できないなんて、甘すぎる。
それにね、異動することを前提にこれからのセラピスト人生のことを考えると、特定のことしかできないセラピストなんていらないんだよ。
回復期リハ、訪問、通所どこでも働けるけど、あなたの能力は訪問向きだね!
っていう感じで訪問に異動させられるならわかるよ。
でもね、
あなた回復期リハでしかできないの?訪問で働けないんじゃ、この法人では意味ないよ!
ってことで回復期リハに残留するっていうのとでは大違いだ。
子育てとかの場合はちょっと違う
育児とか介護とかに関わっているセラピストに対してはちょっと違う見解を持っている。
保育園とか小学校のことを考えると勤務時間の変更とか職場の異動で勤務場所が変わるっていうのは困ることが多い。だから、異動できなくて同じ職場にいるっていうのは理解できる。
ここで言いたいのはそんなことではなくて、比較的異動のことを考えやすい環境の人たちのことを述べています。
今20代でも20年先は40代
考えられないかもしれないけど、20代のセラピストでも20年先は40代。
バリバリ稼がないといけない時代になる。そんな時になって、特定のことしかできないっていうのは問題。バリバリ稼げないよ。
今だけのことを考えるのではなく、20年先のことを考えながら今すべきことを考える必要があるってことに気が付いているのかな?
スペシャリスト=特定のことだけをやる っていう風に勘違いしたらだめだ。スペシャリストっていうのはほかのことに手を伸ばせばきっとほかのこともできるようになるんだよ。
回復期リハだけをやりたいなら、訪問とか通所のこととかにも精通していないとこれからはやっていけない。
これから10年間が正念場だよ!
不安な人は是非読んで!
2020年版
⇒https://note.com/yamada_ot/m/m1f991727b13b
コメント
興味深く読ませて頂いています。
「仕事」「学ぶ」ことへの姿勢、とても共感しております。
今回の領域傾倒に関して、人事を担っている管理職PTとして補足的なコメントを書かせて頂きます。
他の領域や他部門への異動を拒む、避けていると業務実績が限定的となる為、求人(中途採用)ではとても不利になることがあると皆さん、特に回復期専門でこられた方へ知ってほしいと思います。
急性期、慢性期、生活期の実働がイメージできない(経験がない)と再就職時に敬遠される傾向があると思われます。
今後の人生の為に、PTOTという専門領域は本来どうなのか、今はして貰っている上司のマネジメントをどのように今後見に付けるか、今すぐにでも取りくんで頂けるといいのではと求人シーズンに良く感じることです。
特に回復期1本です!!という方、Hurry Up!!!!
通りすがりの管理職PTさんへ
再就職などへのご意見ありがとうございます。
回復期だけに限らず、自分の可能性を狭めていることに気づいていないセラピストは多いと思います。特に30代や40代くらいの中堅どころのセラピストの方には、積極的に多領域に関わってほしいものです。
いつも山田さんのコラムに激励を受けながら仕事しています。
今回も非常に共感できるお話というかこの前私が所属している法人でリハ室にこもっているようなセラピストは淘汰されるというような話をしたところでした。私がいるのは老健を主体とした法人ですが、老健でもリハ室で行うリハビリ以外はやりたくないというセラピストが多いです。私が思うに教育する人たちがそういう環境でリハビリを経験してきた人たちが多いので、そういった人たちに教えられたセラピストにとっては仕方のないことなのかもしれません。また老健に就職するセラピストはプレッシャーのない環境で仕事をしたいという意識が強く、外に出て家族や他職種と関わって自分の浅さに気づくのが怖いのだと思います。ただ単位を取るだけのセラピストであれば新人や非常勤、掛け持ちの方がコストもかからないということが分からない人たちが非常に多いです。
暑いですがお体に気を付けられてこれからも情報を発信してください。
多職種連携の時代に引きこもってるだけだなんてもったいない。
自分のやってることを、他に見られたくないなんて、自分のやってることに自信ないんでしょうねぇ。
研修会企画していただいたら、カツを入れに行きますよ。
法人に掛け合って是非来設頂きたいです。
地域包括ケアシステムは、例えば老健の中でも本当に実現できる、実現したいと考えている事業所は少ないような気がします。うちの老健は超強化型を取得していますがベッドコントロールで大変なのは連携室で、とどのつまり連携室だけが頑張って復帰率を維持すれば、看介護・リハは結果が出ても出なくてもあんまり関係ないという状態に陥りやすいです。
重い後遺症や進行性の疾患、加齢など要介護状態に置かれる方はやはり何らかの介護が必要になる。そのような方々になんとか住み慣れた我が家で生活をしてもらうため、老健でしっかりと短期集中的にリハを行い、その後訪問やデイケア、デイサービス、地域の活動などへソフトランディングさせ、それを継続するために双方向のサービスで地域を支えるのが地域包括ケアだと考えますが、これには他職種、他事業所が同じ思いで動かなければ「絵に描いた餅」になりそうな気がします。
うちの法人は「川上から川下まで」のスローガンのもと老健から訪看、特養、有料からデイサービスまで揃っています。ただ揃っているから逆にそれぞれのセクショナリズムが強く働き、連携がうまくいきません。何か今の医療介護業界の縮図のような気がします。
自分は36歳の時セラピストになり現在45歳でデイサービスの管理者をしています。残された道はここしかないような気がして困難な課題を乗り切るのが最後の使命だと思っています。
山田さんのお話を聞ける機会があると励みになります。宿直明けでなんか変なテンションで長文になってすいません。これからも応援しています。
コメントありがとう。
法人内でサービスがそろっているのに、なんだかもったいないですよねえ。「川上から川下」ってよく言われるフレーズだけど、最近は入院歴のない利用者さんも生活期では出てきていますよね。生活期で受けるリハビリが人生で初めてのリハビリ。そんな人が骨折したり脳梗塞になったり肺炎で急性期や回復期でリハビリを受けたりしています。川上から、ではなくて川下から上流へも患者さんは流れていく時代になってきています。そんな時代に法人内での連携がうまくいかないのは残念です。