回復期リハ病院と訪問リハ・通所リハで用いる共通のリハ計画書のことに関するコラムの続編です。なんでこんな風に病院と介護保険領域で同じ書式を用いるのかってことを書いておきます。
退院後2週間以内のリハの開始
介護報酬改定の議論の中で、以下のようなスライドが提示されました。訪問リハのスライドを出していますが、通所も基本的に同じです。
回復期リハビリテーション病棟を退院後も継続的にリハビリテーションを行う方が望ましいケースについての議論。
退院後早期にと言うのは、退院後2週間以内なのですが、2週間以降にリハビリ開始されているケースがあるということ。退院後早期にリハを開始したほうが改善度合いが高いことが示されました。
回復期リハ病院退院後なるべく早く介護保険領域のリハビリテーションにつなげるほうが良いということが示唆されました。
ケアマネとの連携
退院後早期にリハビリテーションを開始するには、ケアマネジャーさんの作成するケアプランに通所リハビリや訪問リハビリが位置付けられている必要があります。
そのためには、退院にあたりケアマネジャーが回復期リハ病棟の職員と連絡を取ることで退院後早期にリハビリテーションを実施するほうが望ましいかどうかを確認することが求められます。
改定の議論では以下のようなスライドが示されました。
ケアマネが単独でリハの必要性の有無を判断するのではなく、病院の医師やリハ職と相談し退院後早期のリハビリテーションの開始を判断することが出来るようにするということです。
SPDCAサイクルの期間短縮
介護保険領域ではPDCAサイクルではなくて、SPDCAと言われています。
Surveyっていうのは訪問リハビリとか通所リハビリテーションの事業者が、新規利用を開始するサービス提供開始前に利用者さんの情報を収集する行為のことを指しています。
従来はサービスを提供してからPDCAサイクルを回していたのですが、事前に情報収集するほうがいいよってことですよね。サービス提供時点で目標設定が出来ているということです。
- Surveyの部分を短縮すること
- ケアマネがリハの必要度を判断できること
退院後早期にリハを開始するためにはこの2点が必要なんです。
だから、退院時に病院側のスタッフが介護保険と共通の書式を用いて、計画書を作成することが必要なのです。
通所リハや訪問リハの指示を出す医師が病院側が作成したリハ計画書を確認すれば、その計画書で通所リハや訪問リハを開始できます。
回復期リハ病院の医師が退院後の1回目の指示書を書くことはよくあります。
その時に回復期リハ病院のリハスタッフがリハ計画書を作成していれば、それで退院後すぐにサービスを利用できます。
退院後のタイムラグをかなり減らせる可能性があります。
だから診療報酬でも介護報酬でも使うことのできる共通の書式を用いることが重要なのです。
これからの課題
個人的私見です。
病院では退院することが入院リハビリテーションの関わりの終了です。
だけど今、介護保険領域ではリハビリテーションからの卒業がテーマになっています。
リハビリテーションの限界とサービスの適正運用
だから、計画書に記載されることになる目標をいつまでに達成できるのかという時期が重要です。
計画書には「目標」「リハビリテーション終了の目安・時期」という項目があります。社会参加の状況なども記載する必要があります。
この部分に対して、回復期リハ病棟のリハビリテーション専門職がどのように考えているのかってことが重要。
- 退院後の患者さんの生活状況
- 地域でのリハビリテーションサービスの提供の現実
- 地域包括ケアのこと
というような、病院退院後の患者さんを取り巻く状況を学ばなければ、知る努力をしなければ、現実と乖離した病院と同じようなリハ計画書が出来上がってしまうのではないかと危惧しています。
リハビリすれば何でも元に戻るような期待を抱かせ退院させるのではないかという不安もあります。
病院では自宅復帰が目標かもしれませんが、退院後の目標は自宅復帰ではありません。そんなことを理解してきちんと目標設定してくれるのかという不安もあります。
だけどこれは病院リハスタッフだけの問題ではなく、同じエリアの生活期リハビリテーションスタッフとの連携で正しい理解をお互いに持つ必要があります。
今回の改定で共通の書式を用いることは良いことですが、共通のリハビリテーション概念を持って取り組めるのかということは不安が残ります。
以前にコラムで紹介した石巻圏域さんの取り組みはこの共通のリハビリテーション概念の構築にあるわけなんですよ。あのスタイルが全国に広がってほしい。
⇒急性期・回復期・生活期「リハビリテーション」の共通認識への第一歩 石巻圏域の取り組み
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