先日新卒の作業療法士さんからお悩み相談を受けたのでちょっと僕なりの見解を書いてみる。
私は臨床経験34年目の56歳非常勤掛け持ち作業療法士です。いろんな領域で働いています。
その新卒OTさんは、児童デイにお勤めだったのですが、同じような悩みは作業療法士が一人職場で働いているセラピストさんにも参考になるとは思います。
特にリハスタッフ少数職場で、マンツーマンリハ・個別対応のリハ以外だけではなく、送迎業務とか食や排せつや入浴の介助も業務上やらなければならないような職場で働いている理学療法士や作業療法士さんで同じような悩みを抱えている人は多いと思います。
お悩みの内容
勤務先の職場では、通所型の施設で、食事や入浴の提供もしている。作業療法士として個別的なリハの提供も行うが来所している子供さんたちの一日のスケジュールとして食や入浴などもある為、そういった業務にも関わっている。
そんな日々を過ごしていると、作業療法士として個別のリハではなく介助の仕事が多くなってしまう。それは作業療法士としてどうなの?って思ってしまう。
- なんで私が介助?
- もっと作業療法士らしい業務をしっかりしたい
- 作業療法士としての成長を考えるとこのままでいいのか?
他にもいろいろありましたけどざっくりと書くとこんな感じ。
新卒で作業療法士が自分一人だけで、病院と違ってマンツーマンリハが中心ではなくて関連業務が多くなりがち。作業療法士としてのアイデンティティでなやんでしまう。
実はこのようなお悩みを聞くのは、ちょくちょくあることなんですよね。
児童発達支援・放課後デイサービス・生活介護といったいわゆる児童デイサービスのスタッフさんから聞いたのは3人目かな。ほかにも業務形態が似ている、高齢者のデイサービスや老健勤務のセラピストさんからも、
「リハ以外の業務が多くてセラピストとしての成長とかこれからを考えらると、このままでいいのか悩んでしまいます。」
といった感じの相談はときおりいただく。そんな相談に対しての私の回答はおおむね次のような感じとなります。
職場環境のこと
このような相談で考えないといけないことで大切なことは、職場がブラックな職場であるのかどうかということ。
人手不足で施設として必要な人員が不足していて、リハビリしている時間なんてなくて、とにかくありとあらゆることをしないといけない。そんな感じの職場状況なら疲弊するばかりなので、作業療法士としてどうこうというより、退職するかどうかということを考えるべき。
また職場がリハビリテーションに理解がなく、リハなんかしなくてもいいって言われてしまうとやっぱり続けにくいよね。通所介護とか児童デイのように規模の小さな職場だと、管理者さんや経営者さんの考え方ひとつでリハ職の働き方は変わってくる。
職場がブラックではなくて、管理者さんや経営者さんもリハのことを考えているけど、利用者さんのスケジュールとして食事や入浴があり、その時間帯にリハをすることは出来ないから業務として作業療法士であろうが、他の職種であろうがスタッフで協力して食事や入浴にかかわるのであれば、それはお仕事として作業療法士も担うべき役割だと思うのです。
その職場で遂行しなければならない業務、作業療法士としてやるべき業務というような分担は生活期や地域の職場であれば区別が難しいというのはよくあることです。
それって作業療法士だからではなくて、作業療法士も介護スタッフも看護師さんもみんなで協力してかかわるべき業務なので、一緒にすることが求められていることなんですよね。だから「その仕事は作業療法士の役割ではないのでやりたくありません」っていうのはどうかなとは思います。
作業療法士としての視点
食事の介助や排せつの介助、送迎業務などなど直接的なリハビリテーション業務や作業療法業務ではないお仕事は児童デイや通所介護ではよくあること。
それらの業務を「単なる介助や介護」として嫌々実施するのか、作業療法士的視点で関わることで、「介助量の軽減」「動作や行為の効率化」「機能の改善」につながるような工夫や関わりが出来ないかということを考えることが出来るのではないかなと思うのです。
そういった思考は看護師さんや介護職さんではなく、作業療法士としての思考なんですよね。
運動機能や姿勢や環境調整のことなどを考えながら生活動作の支援を行うというのは立派な作業療法業務なのです。
リハの学校では習わないことかもしれませんが、リハビリの時間としてマンツーマン業務をしているときだけが作業療法ではなく、作業療法士が対象者さんと関わるときはすべて作業療法の時間なのです。だからどんな業務をしていても「もっと上手にできるようにならないかな」「なんで上手にできないんだろう」「どんな工夫をすればもっと楽に、もっと上手にできるかな?」と考えるのが作業療法士としての視点なのです。
単にスタッフとして介助するのではなく、作業療法士としての視点で関わることが大切です。
セラピストとしての目標設定
患者さんや利用者さんに対しての目標設定ではなくて、自分自身の目標を持つことは成長のためには大切です。
- 作業療法士として1年後や2年後どんなふうになっていたいのか?
- その職場でどんな風な役割をしていたいのか
- どんなことを学びたいのか?
そんな感じで、自分自身の目標を決めることは大切。日々悶々と過ごすのではなく、自分が自分の成長のために何をするのかってことを考え実践してみてほしい。
相談したり学んだりできるネットワーク
今回の新卒OTさんは自分の学校の恩師に相談して、僕と会うことが出来ました。
悩んだり困ったりしたときに、相談したり頼ったりすることは大切です。新人さんや20代くらいの若手の理学療法士さんや作業療法士さんが知っているリハビリテーションの世界って結構狭い世界なんですよね。だから自分で正しく判断できないこともある。だからこそ、いろんな人とつながってほしいなと思います。
SNSやネットで検索すれば、地元の勉強会なんかを見つけることは出来る。理学療法士や作業療法士であれば、都道府県士会の勉強会や研修会もある。時間を作って少しずつそんな場に参加して、いろんなセラピストの話を聞いてみてほしい。
けっこう皆さん悩みながら働いている。困っている。
だからこそ他の人と繋がってあーでもないこーでもないと話すと少しは気が楽になる。
つながった人から紹介を受けて人と会ったり、相談したりすることが出来ることもある。
リハ少数職場や一人職場だからこそ外部と繋がってほしいのです。
今回ご相談を受けた作業療法士さんには、私の知っている児童デイとつないで見学してもらう方向で話を進めています。
20代30代のセラピストで悩んでいる方は多いともいます。特に生活期や地域で働いているセラピストは多かれ少なかれ悩みを抱えていると思う。
少しでもそんなセラピストさんに参考になればうれしいです。
やまだリハビリテーション研究所
作業療法士:山田 剛
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