なんらかの病気や障害によって手をうまく使うことができなくなった子供さんや患者さんは、お箸ではなくスプーンを食事に使うことが多くなる。片麻痺患者さんだと、動きやすいほうの手でスプーンを使いますが、両上肢ともに動きが制限されているような場合は、普通のスプーンでは使いづらい事も多くなります。そんな時、ちょっとした工夫でスプーンが使いやすくなることもあります。作業療法士の立場からスプーンを上手に使うための工夫すべきポイントについて書いてみた。
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柄の部分を太くする
握力が弱くなる、可動域に制限が生じるなどの理由から普通のスプーンを握ったり、把持できなくなったりする方はけっこういます。そんな時一般的には、スプーンの柄を太くするという選択をすることが多いです。
樹脂を使って柄の部分太くしたり、スポンジにスプーンの柄を差し込んでみたり。
何にもなかったらティッシュペーパーをスプーンの柄の周りにグルグル巻きにして、その上からビニールテープを巻いて太くしたりします。簡易的な方法なんですが、太い柄のスプーンをうまく使えるかどうかの確認のためには効果的です。
いろんなお店で探して、もともと柄の部分が太いスプーンを探すってこともしますね。
太くする理由
柄を太くするのは、可動域制限などに対して握りやすくするための工夫の1つなんですが、他にも理由はあります。
柄を太くするってことは当然ながらスプーンの重量は少し重くなります。それでも使いやすくなることがあります。それにはきちんとした理由があります。スプーンの重心が掌の中におさまることで、手部にかかる重さが軽減するんですよ。
金づちを使ったことありますか?大工道具の金づちです。先っちょが金属で釘とかを打つ時に使うやつね。金づちって柄の部分を握ると当然ながら多少の重みを感じますよね。だけど、逆の方を持ってみてください、金属の先っちょの部分を持つと軽く感じませんか?
野球のバットなんかも同じです。普通にバットを持つと少し重く感じますが、バットの太いほうの端っこを持ってみてください軽く感じます。
持つ部分を変えるだけで金づちやバットは軽く感じます。別に持つところを変えると重さが変わるわけではありません。
物体の重心に近いところを手掌(手のひら)の中に収めることで、軽く感じるだけなんですよね。
スプーンの柄を太くすると、スプーン重みの中心が手掌の中にあって、先の部分を操作するときに軽く操作することができるのも柄を太くする利点なんですよ。
スプーンを軽くする
筋力低下が著しい患者さんにとって、金属のスプーンって重いんですよね。金属のスプーンを持つことはできないけれど、100均で売っているプラスチックのスプーンなら何とか口にまで運ぶことができる患者さんを担当したことがあります。
健康な方からしてみれば、金属のスプーンもプラスチックのスプーンもあまり重さに違いを感じないかもしれませんが、筋力が低下するような患者さんにとっては少しの重さの違いがその道具の操作性に影響を与えるのです。
スプーンを長くする
持ち手の柄の部分を継ぎ足したりすることで、手首や肘の可動域制限を補えることがあります。スプーンを持つことはできるんだけど、、口まで届かないって場合に加工したりします。
スプーンの先の角度を変える
フォークと異なり、スプーンはスプーンの上に載せているものがこぼれやすいんですよね。スプーンを水平に保つ必要があります。だけど、可動域制限や筋力低下などがある患者さんの場合には、水平に保つことが難しい患者さんもいます。そんな時は操作しやすい角度にスプーンの先の角度を変えたりします。
スプーンの先を口の方向に曲げたりすることで、可動域の制限を補うこともあります。
ペンチや万力を使って曲げることが多いのですが、タオルなどでスプーンを覆ってからペンチや万力を使うのがコツです。特にスプーンの先の部分は口に入れるので、ペンチなどで直接はさんでしまうとスプーンの先がギザギザになってしまって口に入れるときに口当たりが悪くなってしまうので、タオルなんかで覆ってから加工します。
ネットや100均で探す
加工が難しいようなスプーンを利用したいとき、患者さんの条件に適合するようなスプーンが身近にない時は100均めぐりをして探したり、ネットで探したりします。
どんな商品が市販されているのかってことを常にチェックする姿勢もリハビリテーションに従事するスタッフの仕事の一つなんですよ。
スプーン握り関連の記事をいろいろ書いています。
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