作業療法士としていろんなところでいろんな関わりをしていますが、この記事については全くの個人的見解です。何かの立場として書いているわけではありません。だけど、臨床で働いて24年、リハビリ病院、老健、訪問で働いてきた立場で言いたいこともある。生活行為向上マネジメントについてちょっと書いてみた。
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生活行為向上マネジメント
平成20年あたりから日本作業療法士協会が中心になって研究し、研修会を積極的に開催しているのが生活行為向上マネジメントです。
研修会にも参加したことはあります。
在宅で、特に介護保険の領域で利用者さんとかかわっている理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の方にはぜひ知っておいてほしいツールだと思います。訪問の現場などで利用者さんのプログラム立案に困っているセラピストにとってもよいツールだと思います。
生活行為向上マネジメントのメリット
生活行為向上マネジメントを利用する際のメリットとして感じているのは
- 利用者の評価から、プログラムの立案、実施までを視覚化できる
- 誰でも手順を考えて出来るツール
この2点だと思う。
過程を視覚化できるツール
介護保険の領域では、サービス担当者会議などのように他職種であるケアマネジャーや介護職ヘルパーさん、看護師さんたちに自分のやっていることをわかりやすく説明する必要がある。
色んな評価バッテリーを使って利用者さんに関わるのがリハビリテーションだけど、難しい検査の数値とか、専門用語羅列したって介護保険領域では他職種に自分たちのリハビリテーションのことを理解してもらうのは困難だ。
だけど、生活行為向上マネジメントを利用することで、比較的理解してもらいやすい書式で利用者さんの状態や取り組んでいる課題やプログラムをまとめることができる。
課題、アセスメント(評価)、目標やプログラムの関連性をわかりやすく提示することができる。
セラピストが独自にまとめるよりは、こういった生活行為向上のためのツールを使うほうが理解してもらいやすい。
手順を統一できるツール
病院から訪問リハビリテーションや地域リハビリテーションの領域に転向してくる理学療法士や作業療法士、言語聴覚士は多い。だけど、地域リハビリテーションの現場では、病院と同じようにリハビリしていたらいい訳ではない。病院でのリハビリテーションが終了して、回復の伸びしろが少なくなっている利用者さんの状態をいかに生活に結び付けるかってことが大事になってくる。
病院との違いに悩んでいるセラピストも多いと思う。
自信を持って在宅の利用者さんを評価して、目標を設定して、プログラムを立案する。そんな事が苦手な若手のセラピストにとってはこのようなプロセスが非常に難しいと感じているようだ。
だから、標準的なツールとして用いることのできる生活行為行為向上マネジメントは地域リハビリテーションで評価のプロセスに悩んでいるセラピストにとっては大変便利なツールだ。
何から始めて、どのように取り組んだらよいのか手ことがわかりやすいツールだ。
だけど、ちょっと言いたいこと
生活行為向上マネジメントを否定するつもりは全くない。他職種と情報共有したり、カンファレンスで提示したりするには有用なツールだ。だけど、ちょっと言いたいこともある。とくに、この研修に飛びついている若い作業療法士には言いたい。
- 他職種にリハビリテーションを理解してもらう
- 地域リハビリテーションでも作業療法士の能力を発揮する
こういったことは、生活行為向上マネジメントを利用しなくても作業療法士が地域で働くならできて当たり前のことなんじゃあないのかな。
ぼくは、訪問リハビリテーションの現場で現時点では生活行為向上マネジメントを積極的に活用していない作業療法士です。それを用いなくても、作業療法士として普通に利用者さんを評価して、プログラムを立案できる。
本来作業療法士は、地域でトータルに利用者さんの生活をマネジメントできる職業なんだ。
学生のころから、ADLのこととかIADLのことを学び、小児への作業療法や、精神疾患への作業療法や、身体疾患や高齢者への作業療法を学ぶ。高次脳機能への関わりを学ぶ。
こういったことは、さまざまな対象者さんがいる地域リハビリテーションの現場でトータルにいろんな疾患を見る作業療法士には不可欠な知識だ。
作業療法士として地域リハビリテーションの現場で当たり前のことを実践していれば、慌てて生活行為向上マネジメントに飛びつく必要は全くない。
だけど、生活行為向上マネジメントの研修会は人気がある。ってことは、作業療法士として当たり前のことができなくて困っている作業療法士が多くいるってことなんじゃあないのかな。
- 自信を持って評価できない
- 他職種との連携ができない
- 地域で困っている
周囲でアドバイスしてあげることのできる中堅の作業療法士も少ないんだと思う。だけど、地域で作業療法士はその能力を発揮できれば、在宅の利用者さんの生活をマネジメントできる。
そのツールとして、生活行為向上マネジメントを活用することは問題ない。だけど、本来ならそのツールを使わなくてもマネジメントする能力を持っているべきなのが、作業療法士なんだ。そのことをしっかりと理解したうえで地域リハビリテーションに関わってほしい。
便利なツールだから使うのではない、作業療法士が作業療法士としての能力を発揮する手順をわかりやすくしただけなんですよ。このツールが広まるのはいいことです。
でもこのツールが作業療法士に広まるってことは、作業療法士の能力がやや低下しつつあるのかなって感じざるを得ない。そのことがものすごく心配です。そんな風に感じるのは僕だけなのかな?
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