リハビリテーション関連職向けに日々コラムを書いている。ほんの少しだけ一般の方向けにも書いている。できれば、リハビリテーションのことを正しく理解していないセラピストやケアマネジャーさんに読んでいただければとの思いで今回のコラムを書いている。そのテーマが、表題にある「リハビリテーションは元に戻すのではない」ってこと。
「リハビリテーション=元に戻す」という考え方は間違っている
リハビリテーションをしても「元に戻らない」こともあるということだ。
このサイトを訪れた何らかの疾患や障害をお持ちの方からは批判をいただくかもしれないが、作業療法士として2019年で29年目となる私の個人的見解を書いてみる。
※※ここから先は私の個人的な見解です。何らかの病気や疾患の方、お読みの方の病状に合わせて書いておりませんので、ご自分のリハビリテーションの可能性や回復については、必ず主治医やリハビリ担当の方にご相談ください※※
このサイト『やまだリハビリテーションらぼ』では主に、医療・福祉・介護の分野で働いている専門職の方向けに情報を提供していますが、リハビリテーションに関する基本的な事柄については、一般の方に向けて解説しております。しかし個々の具体的な患者様への情報提供は行っておりませんし、患者様やご家族様からのご相談にも対応しておりません。
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リハビリテーションは魔法ではない
病院や介護保険でリハビリテーションを行っているのは
- 理学療法士(PT)
- 作業療法士(OT)
- 言語聴覚士(ST)
という職業のスタッフです。
脳卒中や骨折、認知症など様々な病気や障害をお持ちの方のリハビリテーションを病院や訪問や通所の事業所などで行っています。
リハビリテーションとは、手術や医師が処方するお薬などとは異なり、折れている骨をくっつけるとか脳そのものに何か手を加えるということするのではありません。そう言った意味では病気や障害を治すという根治療法ではないのです。
リハビリテーションをすれば元に戻る
という可能性は否定しませんが、すべての対象者が元の体の状態に戻るというのではないのです。
私の作業療法士としての技量や経験が足りないという指摘もあるかもしれませんが、後遺症が残る病気や徐々に進行していく病気が世の中にはあります。
骨折のように元のように骨がくっつくということもありますが、それでも手術をすれば筋や組織に何らかの影響を与えることになり完全に元通りになるということではないのです。
現在リハビリテーションに取り組まれている人の、希望を奪おうとしているのではありません。正しく理解してほしいのです。
リハビリテーションは魔法ではありません。元通りにならない場合が多くあります。
後遺症のすべてをなくしてしまえるわけではないのです。
回復を良い方向へ導く
脳卒中などでは、脳の出血や梗塞については医師の治療や手術が必要です。脳の出血や梗塞の治療が終わればリハビリテーションを実施するという段階になります。
脳の機能は複雑ですべてが解明されているわけではない。
自然に回復することもあれば、なかなか回復しないこともある。年齢や脳が受けたダメージの範囲によって回復度合いは異なる。
動きの良くない手や足をそのまま放置していれば、関節や筋肉が硬くなって動かなくなってしまうこともある。自分で思い通りに動かせないこともある。
そんな患者さんのリハビリテーションを理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が担当するのですが、そのリハビリテーションは「元に戻す」ということではないのです。
いまよりも良い状態に改善することに取り組みますし、私もできる事なら元に戻ることを期待してはいますが、状態によっては後遺症が残ることもあります。
元に戻らないこともあるのです。
正直に個人的見解を言わせてもらうと、元に戻すのではなく「回復しようとする人間の力を、良い方向に導く」、「後遺症が残ってもその体で自宅に戻って生活することが出来る」ことを目指すのがリハビリテーションだと私は考えています。
動かなくなってしまった手や足が硬くなる「拘縮」という状態になる事を予防します。
足の状態が良くない場合は「車いす」を使って移動する練習をします。
右手がうまく使えなくなったら、左手を使って着替えや食事が出来るような練習をします。
元に戻らないときでも、今の体をうまく使いこなして何とか、生活できるようになることを目指してリハビリテーションを実践します。
回復をなるべく良い方向に導くことがリハビリテーションだと思います。
今の体の状態で生活に適応することを目指してリハビリテーションをすることもあります。
2017年の厚労省の介護給付分科会に提出されている資料から引用すると、リハビリテーションの定義は
リハビリテーションは、心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として、単なる機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものである。
となっています。同じ分科会に提出されている図も掲載しておきます。
やりたいことは何ですか?
後遺症が残ることもある。
だからといってそのまま放置するわけではありません。
定義にもあるように
機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促す
ことを目指して様々な取り組みをするのもリハビリテーションです。
車椅子に乗って旅行できることがある。半身が動きにくくても職場復帰した方もいる。
「これからやりたいこと」
を実現するために色んなことに取り組むのもリハビリテーションなのです。
それは決して元に戻すことを目的や目標にしているのではありません。
地域でリハビリテーションに携わっていると、このことにご理解のないケアマネジャーさんやセラピストにたくさん出会います。
目の前にいる人の
やってみたいこと
を一緒に考え実現してみたいと考えています。
そんなことがリハビリテーションなんだと考えています。
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2019年版 病院リハと地域リハをつなぐ・変える
コメント
上記の内容は、理解出来るつもりですが、やはり実際車椅子の生活になってしまうと、これから先の人生が不安になってしまう事があたりまえだと思います、車椅子で外出すると、どうしても健常者が、自分を見る目が気になって、社会に出る事がこわくなります、出来る事ならば、リハビリをして健常者の方と変わらない生活が出来る様になるのが夢です。
コメントありがとうございます。
それぞれの患者さんの回復を全否定しているわけではありません。
医学の進歩により新しい治療法などが考え出されることを否定もしません。
患者さんの希望を打ち砕こうとしているわけでもありません。
ただ関連職種に理解のない方がいるという現状があるので、後遺症が残る病気も存在するということを知ってほしいという目的で書いていますことをご理解ください。
車椅子で外出して楽しんでいる方も担当していますよ。
新しいことにチャレンジしている方もいます。けっしてそういった形が特別だとも思いません。
そんな方向もあるんだと思います。
やまだ たけし先生コメントありがとうございます。
私は、6ヶ月の間意識不明で、最初に入院した病院からは、このまま意識が戻らない事を覚悟して下さいと言われたそうです、しかし、今では奇跡的に意識が戻って、ロフストを使って歩けるようになりました、だかこそ今まで迷惑かけて来た家族の為にも、何とか自分の足で歩いて健常者と同じ様に、表に出て仕事や買い物などを自由にしてみたいと思っています。
コメントありがとうございます。
同じことの繰り返しになるかもしれませんが、回復そのものは否定しません。下山田さんの回復への思いを断ち切ろうとも思いません。頑張ってほしいです。
ロフストを使って買い物している人も過去の担当者にはいました。だからロフスト使って外出できるならどんどん外出してほしいなって思います。
「ロフスト杖なしで歩けるようになったら買い物に行こう」ではなくて「ロフストでも買い物に行こう」ってことをどんどんしてほしいなって思います。そう言ったことも能力を改善するには必要かと思います。