将来は地域に出て訪問リハビリや老健でのリハビリテーションに関わっていきたいと考えている若手の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は非常に多い事と思う。そんなセラピストの多くは介護保険領域ではなく、医療保険を対象にした回復期リハビリテーション病棟で働いている方がほとんどだと思う。そんな、回復期リハビリテーション病棟を中心とした病院で働いている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が、将来地域に出て働きたいと考えているなら地域に出るまでにやっておくべきことを書いてみたい。
1、介護保険の情報を知る努力をする
いま、回復期リハビリテーション病棟・病院で働いている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の皆さんは、介護保険のことをどの程度ご存じなのでしょうか?
特に大きな法人のリハビリテーション科に勤務している若手の理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のかたは
- 介護保険のことは相談員に任せておけばいい
- 何か制度の改正があったら上司から聞けばいい
と気軽に考えている人も多いかもしれない。そんなことでは、地域に出て働くことは難しい。地域で担当する方の多くは、介護保険領域の方だ。2~3割くらいは医療保険の方もおられる。医療保険と介護保険では制度が異なるため、おなじ40分のリハビリテーションを提供してもその料金は異なる。
訪問リハビリテーションではセラピストが直接利用料を利用者さんから集金することが多い。そんな時にきちんと説明できないようでは集金はできないのである。
こんなことはほんの一例だ。
病院で働いていたら、事務員さんや相談員さんに任せていても大丈夫なことも、地域に出たらそうはいかない。
というより、そもそも病院で働いている今も他職種任せにしてはいけないのである。新聞やテレビなどで報道されている情報くらいはきちんと把握するのが専門職というものである。
このような、情報を収集するというのは一種のスキルなんですよね。地域に出たから身につくというものではなく、常に情報に対してネットを張っておくというか、アンテナを張り巡らせておかないと情報は収集できません。
今すぐやるべきことなんです。
2、自分の担当患者の退院先をきちんと把握する
あなたの勤務先の回復期リハビリテーション病棟・病院の自宅復帰率はどのくらいかご存知でしょうか?
自宅復帰できない患者さんはどこに行っているか知っていますか?
あなたが将来地域に出て働きたいと考えているなら、回復期リハビリテーション病棟・病院を退院した患者さんがどのような経路に退院しているのかをまず知るべきです。
そこにはリハビリテーションのサービスはあるのでしょうか?理学療法士や作業療法士がいてリハビリテーションを受けているのでしょうか?
そしてあなたは、転院先にきちんとリハビリテーションの情報提供をしていますか?
知らない間に担当患者さんが退院していた
なんてことはありませんか?
あなたが将来地域に出て働きたいと考えているなら、地域に戻るあなたの担当患者さんがどこに行くかくらいは把握しておきましょう。
3、退院目標として自宅復帰をリアルに想定する
2014年1月現在、日本作業療法士協会の中村春基会長 からお聞きしたことです。
回復期リハビリテーション病棟・病院で働いているセラピストが担当患者さんの「退院後のリアルな生活をきちんとイメージできること」が非常に重要である。その退院後のリアルな生活のイメージに基づいた短期目標を設定してアプローチする必要がある。
私もその通りだと思います。
できもしないような夢の短期目標は不要なんです。
どの患者さんを担当しても同じような目標設定しているようなセラピストも不要なのです。
一人ひとり異なる患者さんの生活をリアルに想定して治療目標を設定することが、回復期リハビリテーション病棟・病院に務めている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のミッションなのです。
いま働いている地域の介護保険領域のリハビリテーション事情を把握する
4、退院した患者さんの様子を少し知ってみる
あなたは自分が担当した患者さんが退院後どのような生活をしているのか知っていますか?
- あなたがかかわった住宅改修は適切だったのでしょうか?
- 利用をすすめた福祉用品は今の生活に適応しているのでしょうか?
- リハビリ中に獲得した能力は自宅でも発揮できているのでしょうか?
そんなことを考えてみたことはありませんか?
あなたの勤務している法人に、地域リハビリテーションに関する部門があって同僚がその患者さんの訪問に関わっているなら、ぜひその様子を聞いてみてください。
そこでの学びが、あなたの回復期リハビリテーション病棟・病院でのリハビリテーションを進化させます。
そしてその進化が、あなたが地域に出たときに役に立つのです。
5、近隣の地域のセラピストと情報交換してみる
4で述べたことにも関連しますが、将来地域に出て働きたいと考えている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士なら今近隣で地域で働いている理学療法士、作業療法士、言語聴覚士と知り合いになって、ぜひ情報交換してみてください。
あなたが病院にいながら考えている地域リハビリテーションについてのことと、実際に現場で働いているセラピストの間にはいろんなギャップがあると思います。
今から、本当に地域で働いている人の声に耳を傾けておくのは、将来必ず役に立ちます。
なにより、あなたの働いている回復期リハビリテーション病棟・病院の近隣で働いているセラピストならあなたが担当している患者さんの、退院先にいてるセラピストってことでしょう。
あなたの患者さんがいまどうしているかってことを知ることができるんですよ。
あなたがリハビリを実施した患者さんの情報を入手するチャンスなんですよ。
6、リハビリ以外の職種の知人を増やす
地域リハビリテーションというのは実に様々な領域の疾患、患者さんを対象としています。その多種多様な患者さんに対応するにはベテランの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士であっても簡単なことではありません。
そのことをわかっている地域で働くベテランの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は自分の味方になってくれる人材を多くまわりに抱えています。自分の苦手なことをサポート・支援してくれる人材が豊富なのです。
あなたがよほどのスーパーセラピストでない限り、一人で立ち向かうには地域リハビリテーションという領域フィールドは広すぎるのです。
2014年時点で臨床23年目の私でさえ、一人で立ち向かおうなんて思いません。
私よりもベテランで、地域で活躍している理学療法士や作業療法士の方には多くの味方がいます。そんな知り合いを今から意識して増やしていきましょう。
7、住宅改修・福祉機器について学ぶ
地域で働くということは、その地域にお住いの対象者の方とかかわるということです。
自分の家で最後まで暮らす
その為には、住宅改修や福祉機器の導入が必要な方が多くおられます。その人が住んでいる家で、まさにリアルなADLへの関わりができるのが地域リハビリテーションの魅力の一つ。
そのためには、住宅改修や福祉機器の知識が欠かせないのです。
いまから、学んでいても決して遅くはないのです。
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