理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の実習では多くの検査や測定を実施する。その中の一つに感覚検査・感覚テストがある。可動域テストや徒手筋力測定などに比べると数値で表すことが難しいので、苦手な学生も多いかもしれない。だからちょっと書いてみた。
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感覚テストの基本的考え
関節可動域測定、徒手筋力検査、四肢の長さや周径などの評価とは異なり、感覚検査っていうものは数値で表すことが難しい検査の1つだ。
加えていうなら、客観的な結果を得にくい評価の1つでもある。どちらかというと患者さんの主観的なものでしかない。
目で見て判断することができない
感覚っていうものは患者さん本人が感じていることなので、他者(検査者)から見てそれを見極めるというのは難しい。
杖で麻痺側の下肢を引きずって歩いている患者さんが目の前を通ると、100人のセラピストがいれば100人ともに
「麻痺側の下肢の動きが悪いな」
って感じるでしょう。それは麻痺側の下肢を引きずっているという事実をセラピストが目で見て確認することができるからだ。でもその患者さんの感覚の状態までは目で見て確認することはできない。
筆者は近視でメガネをかけています。視力が低いのです。でも、私の視力がどの程度でどんな見え方をしているのかってことは他者からはわからないですよね。それと同じで、感覚っていうものは本人以外にはわからないものなのです。
だから、検査の時には声を出してもらったり、手で指示してもらったりすることで、どのように感じているのかを検査者が目に見えるようにして評価するのです。
視覚の検査の1つである視力テストでは、大きな文字や小さな文字を声に出してもらって読み上げることで、もしくはCみたいなものを見て、どちら側が欠けているのかということを指で指示してもらったりして評価します。
被験者が感じていることを声に出したり指で指示したりというように何らかの運動で表現してもらっています。
話せない、四肢も動かせないって場合の感覚検査は難しい
失語であれば、音声で相手に伝えることが難しいので、感覚検査の実施は難しくなります。
加えて、四肢も動かせない状態になるとさらに感覚の検査は難しくなります。しゃべれない動けない状態だと視力検査とかも難しくなるでしょうね。
感覚検査を実施することができても、被験者がその結果を検査者に伝える手段が限られてしまうために、感覚の状態を表現できないのです。
しびれているとか、全く感じないってことを表出する手段がなければ、検査者は被験者の状態を判断することができないのです。
このように感覚検査は患者さんの状態によって結果が左右される検査であるということを理解しておく必要があります。
検査の環境に配慮する
触覚、痛覚、温熱覚、運動覚や位置覚など色々な検査をリハビリの学生さんは実施します。視覚とか聴覚なんかも感覚なんだけど、あんまりリハビリの実習ではやらないかな。
その時に配慮してほしいのは検査の時の環境です。
感覚検査はなるべく静かな環境で患者さんが集中できる場所でしてほしい。周囲の環境が検査に与える影響を小さくしたいんですよね。2点識別覚の検査等は比較的集中しないと患者さん自身も分からなくなることもあるので、なるべく配慮してほしい。
長時間実施しない
集中するっていうのはけっこうストレスがたまりつかれるものです。だから、あまり超時間感覚テストを続けるということは避けるほうが望ましいです。必要ならなんか科に分けて実施するほうが検査の効率はよくなります。
表出するための工夫
痛みの検査などでは
もっとも痛みのあるのを10とするとどれくらいの痛みですか?
みたいに痛みの表現の仕方を10段階の数字で表出してもらったりすることもあります。運動性失語などでうまく表現できない場合など表出するための手段に工夫が必要です。
患者さんが感じていることをどのように表出してもらうかっていう手段を吟味してほしい。
触覚検査などでは筆で触れたりして検査することもありますが、
筆で触れたときに「はい」って言ってください
みたいな指示を与えて検査を実施することもありますが、失語症の人の場合はどうしますか?呼吸器をつけている患者さんの場合はどうしますか?
声を出して表現することができない患者さんの場合は、「はい」って答えることができないので、他の方法で筆が触れたってことを検査者に伝えてもらう工夫が必要になります。
こういったことは行き当たりばったりで実施するのではなく、あらかじめ準備・検討しておきます。
体調などにより結果は変化する
可動域検査などは比較的客観的なデータを集めやすいのですが、感覚検査などは患者さん本人の主観的な表現に依存する検査なので、その日の体調や疲労度合いなどによって検査結果は変化します。
そういった点で、厳密には客観的データを取りにくい検査が感覚検査です。
そのことを理解したうえで、担当している患者さんの感覚についてある程度の傾向がわかれば良しとすべきものだと思います。
まったくの感覚脱失~正常まで非常に幅広い状態の患者さんが多くいます。だいたいどんな感じの状態にあるのかってことが把握できればよいと思います。
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