2019年12月9日追記
食事動作の姿勢の分析に続いて、食事動作の「上肢機能」分析について書いてみた。姿勢を保持することが上手にできても、上肢を使いこなせない事には食べる動作の改善は難しい。このコラムでは上肢機能のことを中心に書いてみる。
動画で見るならこちら
⇒食事動作の評価や分析 1 (聴くブログ4)
⇒食事動作の評価や分析 2 (聴くブログ5)
食事動作における上肢の役割
ADLの評価 食事動作のこと(学生さん向き)でも書いているように、上肢機能は食事を口に運ぶという点で非常に重要な役割を食事動作において担当している。姿勢の分析については食事動作の姿勢の評価を参考にしてください。
もっとわかりやすく言うと
テーブルの上にある料理を口に運ぶ
これが食事動作における上肢機能の役割だ。テーブルの上にある料理と口までの距離を縮めるのが上肢の役割だ。
スプーンや箸の使い方が上手でない子供たちの食事動作を観察すればそのことがよく分かる。スプーンやお箸の使い方が下手な子供は、料理を上手に口に運べない。口に運ぶまでに箸やスプーンから料理がこぼれ落ちてしまう。
だからそれを補うためにどうするかというと、いわゆる「犬食い」姿勢となってしまう。前かがみになって口を料理に近づけて食べるのである。スプーンや箸をうまく使いこなせないから、料理を口に持っていけない。だから、体を前かがみにして料理と口の距離を近づけることでそれを補おうとする。合理的だ。
口と料理との距離を縮める工夫が食事動作の改善に必要がということだ。
距離を縮めるために必要なこと
上肢が口と料理の距離を縮める役割を担っているとすれば、それを改善する取り組みが食事動作の向上につながる。
- スプーンやフォーク、お箸などの食具の工夫
- 上肢機能の改善
この二つが重要だ。
スプーンの工夫についてはリハビリ的視点のスプーンの工夫という記事に書いているので参考にしてほしい。
上肢機能の評価のポイントについてもう少し詳しく書いてみる
口に運ぶための上肢の機能
口とテーブルの距離を縮めるためには口をテーブルに近づけるか、料理を口に近づけるかという二つのパターンがある。口をテーブルに近づける最も極端な例が「犬食い」だ。
まあ、それは極端としても日常的には両方を同時に行う。
口を少し近づけながら、手を使って料理を口に運ぶという動作である。この時に、上肢を十分に空間で保持するだけの肩甲帯や肩関節の動きがなければスプーンや箸を使って料理を口に運ぶということができない。
また、食器を持つという点でも上肢を空間で保持する能力が必要になる。
箸やスプーンを口に運ぶだけの筋力であったり、上肢を空間で保持する能力が十分あるかどうかってことは食事の評価では重要だ。
食器やスプーンを把持するだけの手指機能
上肢を使って、料理を口に運ぶだけの能力があっても食器やスプーンをきちんと把持することができなければ食事動作を遂行することはできない。
スプーンやお箸をしっかりと持って、口に運ぶのである。もしくは、スプーンやお箸で料理を取りやすいように反対の上肢でお皿やお椀を固定するのである。
このときに、お箸やスプーンを操作したり、お椀やお皿といった食器類を保持するのに必要な、手指や手関節の動きはどうなっていますか?
可動域や筋力、手指の運動性はどの程度残存していますか?
今使っている食器やお箸やスプーンはその患者さんの能力に適したものになっていますか?
特に作業療法士にとって、患者さんの状態に応じた道具を選択することは重要な関わりなんですよ。最も適した道具を選択するために適切な評価を行いましょう。
食事における上肢機能の役割について理解してもらえましたか?
- 料理と口との距離を縮める役割
- 食器やスプーンや箸を操作する役割
この二つをしっかりと評価することが食事における上肢機能の評価では大切なんですよ。
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