リハビリテーションは元に戻すのではない!
↑↑このコラムがかなりシェアされた。当事者さんからのコメントも入ってきました。ある程度想定の範囲内のことなのですが、誤解されている可能性も否定できないので、もう少し書いてみます。
※※ここから先は私の個人的な見解です。何らかの病気や疾患の方、お読みの方の病状に合わせて書いておりませんので、ご自分のリハビリテーションの可能性や回復については、必ず主治医やリハビリ担当の方にご相談ください※※
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元に戻らない
私の27年の作業療法士としての経験から言うと、入院治療が必要でリハビリテーションが必要と判断されるような状態になった場合、回復度合いに差はあれ完全に元通りに戻るということはほとんどない。
だから「元通りに戻る」ことを保証するような治療者は、対象をものすごく絞って回復の可能性の大きな人に限っているか、詐欺なんじゃあないのかなって思います。
「元に戻らない」
言い換えると
「今までとは異なる心身状態にあるからこそ、その心身の状態で新しい生活や新しい人生をスタートするためにリハビリテーションは存在する」
疾患や障害があって身体的にも精神的にもダメージの大きな当事者の方にとっては、「元に戻せないからキレイごとを言っているだけだろう!」とのお叱りや批判がある事はやむをえませんが、私のブログはリハ関連職向けに書いておりますので、リハビリテーションに関わっている人にはこのことをしっかりと伝えたいと思います。
元通りにはならないからこそ、その心身の状態で新しいスタートを切るために関わってほしい
新しいスタート
元に戻すことを目標にリハビリテーションを実施する場合、元に戻ることはありえないので、いつまでたってもリハビリテーションは終了することがありません。
それどころか、新しいスタートを切るべき患者さんの人生をとどまらせてしまう可能性があるんですよ。
どのような疾患や障害であれ、何らかのダメージをおった状態でも自宅の生活に戻ったりや職場へ復帰するためには、今の心身の状態でそういった生活に適応することが必要だ。退院後に待っている生活に適応することが出来るようにする、新しい生活をスタートできる状態にすることがリハビリテーションの役割の一端なんです。
元に戻ることがリハビリテーションなんだとすると、先天的な疾患のある子供さんのリハビリテーションの場合、いったいどの状態を元の状態と考えるのでしょうか?
小児領域の疾患であってもその時の心身の状態に応じて生活に適応することが出来るように、学齢期であれば学校生活に適応できるようにアプローチするのがリハビリテーションなんだと思います。
現在の心身機能、この先の予後予測、これからの生活状況などを考慮しながら、よりその対象者の生活がより良いものに適応することが出来るようにかかわることがリハビリテーションだと考えています。
そのために、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士はお仕事するのです。
バリアーフリーとかユニバーサルとか言うけどね
バリアフリーとかユニバーサルデザインとか言うけどさ、ある意味固定観念にとらわれたリハビリテーションを展開しているのは、リハビリテーション専門職なのかもしれません。
患者さんを元に戻そうとする行為は、ある意味患者さんの新しい挑戦を遅らせていることになる。
元には戻らないのにそのことに固執する患者さんを生み出しているんですよ。
10年以上も前にチャレンジドという言葉を知りました。
そんなことに向けてリハビリテーション専門職として取り組めているのかな?
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士なのにバリアーのなかに閉じこもっていませんか?
リハビリ人生のこと
心身機能の回復にこだわった人を作り出しているのはセラピストの責任だと思うのですが、あまりよくない意味でリハビリ人生って言葉が使われることがあります。
だけど、2015年以降の活動と参加へのアプローチのリハ業界の潮流は、新しい意味でのよりポジティブな意味でのリハビリ人生を生み出すのではないかと期待しています。そんなコラムも書いています。
⇒「リハビリ人生」ありかも!
そんな風によりポジティブな意味でのリハビリ人生への方向に進むことが出来るようにかかわるのがリハビリテーション専門職の役割なんですよ。
動け!行動しよう!変わろう!
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2019年版 病院リハと地域リハをつなぐ・変える
コメント
ケアマネです。定期的にコラムを拝見させていただいています。
よく在宅で起こるパターンとして、元に戻ることを目標とする対象者がたくさんいますね。そして、その目標を活動レベルに置き換えながら新たに提案しても受け入れられない方がたくさんいますね。しかし、裏に潜んでいる問題は、リハビリスタッフの心身機能に着目した関わり以外にもありそうですね。逆に私の知っているリハビリスタッフはこの問題にかなり向き合ってますね。私の経験では、対象者ごとの障害に対する価値観が影響している気がします。しかし、私たちは当事者ではありませんし、当事者の立場に立つこともできませんよね。障害を持った状態で社会参加することに対して「こんな姿見られたくない」と思っている方に、ロフスト杖で買い物に行こうなんて言っても、なかなかうまくいかないですよね。これはリハビリテーションの永遠の課題ですね。
障害への価値観と言うのか、認識と言うものはなかなか難しい問題ですよね。
だけど諦めずに取り組んでいきたい課題でもあります。
提案するのではなく、その人が「やってみたい」と思えるような活動を開発できればいいなと思っています。