ご家族が自宅で、看護師やヘルパーさんが施設や訪問先で取り組むリハビリテーションの1つに関節が固くならないようにするための関節可動域訓練がある。脳梗塞や脳出血等の脳卒中系の疾患や、進行性の疾患など自分で体を動かすことができなくなってくると、徐々に関節の動きは悪くなり固くなってします。関節が固くなって動きに制限が出てしまうことを拘縮といいますが、拘縮をしっかりと予防するためのリハビリテーションの基本的なことを書いてみました。
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知っておいてほしい事
看護師さんと同行訪問していたりすると、関節を動かす関節可動域訓練と、筋肉を伸ばすストレッチを混同している方も多い。ストレッチと関節可動域訓練は異なるリハビリテーションですがどちらの場合も基本は、ゆっくりしっかりと動かすことです。
力任せに無理やり関節を動かすのは間違っています。それでは逆に痛みが出て硬くなってしまうこともあるのです。
関節可動域訓練とストレッチの違い
関節可動域訓練は動かしたい関節をしっかりとその可動域の範囲のギリギリまで動かすことで、関節が可動する範囲を保つことです。ストレッチは筋肉等をしっかりと伸ばすことです。股関節の可動域を例にとって考えてみます。
床の上に仰向け(背臥位)で寝た状態で、膝をのばしたままどちらか一方の足を持ち上げてみましょう。(一人では難しいので誰かに持ち上げてもらってください)
膝を伸ばしたままだと体の硬い人なら股関節が90度くらいまでしか曲がらないですよね。太ももの辺りやふくらはぎのあたりの筋肉が突っ張ってしまってそれ以上動かなくなります。だけど、膝を曲げた状態なら、太もものあたりの筋肉が緩むので股関節をもっと曲げることができますよね。大腿のあたりがかなりお腹のほうに近づくまで股関節が曲がると思います。
関節可動域訓練的に考えると、股関節をすべての可動域にわたって動かすほうが良いので膝を曲げて運動させることになります。膝を伸ばした状態では股関節をしっかりと動かすことができないのです。
ストレッチ的に考えると、例えば太ももの後面の筋肉をしっかりと伸ばしたいのであれば膝を伸ばしたまま足を上げるほうが良いんですよね。膝を曲げてしまうと筋が緩んでしまうからですね。
関節が固くなってきて体が動きにくくなる原因はいろいろです。関節そのものが固くなる場合もあれば、筋肉が固くなってしまって動きにくくなる場合もあります。どちらの場合も見た目にはあまり違いはなくどちらも硬くて動きにくいです。
だけど、筋肉が固くなっていることが原因だったらストレッチ的な運動をする必要がありますし、関節そのものが固いなら関節可動域訓練的なかかわりが必要になります。
だから、理学療法士や作業療法士、看護師などの専門職はその違いを理解してアプローチする必要があるのです。
動かし方
とにかく、ゆっくりと動かします。素早く動かしたり無理やり動かしたりすると、痛みが出てしまい筋肉が固くなったり、痛みに対して反射的に身を縮めてしまったりすることが多いのです。関節一つ一つをゆっくり動かすことが大事です。
痛みが出ない範囲で可動域の範囲をしっかりと動かしましょう。最低でも2~3回くらいは動かします。
大きな関節を動かすときは、両手でしっかりと動かしたい部分を持つようにします。手のひらと指の部分をしっかりと密着させて、大きな面積で持つようにすると不快感が軽減します。指先だけでつまむように持たないように気をつけて欲しいですね。
関節をしっかりと動かすなら
ストレッチと関節可動域訓練の違いということを書きましたが、関節をしっかり動かす事が目的なら、動かしたい関節の隣の関節の動きも考慮して動かしましょう。
手首を動かすことが目的の場合、手指を伸ばしたまま動かすのと、手指を握ったまま動かすのでは、手首の動く範囲は変わってきます。
股関節を動かす場合も、膝関節を伸ばしたまま動かすのと、膝関節を曲げながら動かすのとでは股関節の動く範囲は変わってくるのです。
関節をしっかりと動かすことが主目的であるなら、周囲の関節の動きも考えながら動かすほうがしっかりと関節を動かすことができます。
現場で感じること
関節可動域訓練をしっかりとやっていると、拘縮の予防には効果的です。
だからといってすべての患者さんの拘縮を予防することはできません。病気の進行の度合いや、筋肉の緊張の度合いなどによって拘縮してしまう方もいます。
脳卒中などを中心とした中枢神経性の病気で、筋の緊張がものすごく強い患者さんの場合は毎日しっかりと関節を動かしていても拘縮になってしまう場合があります。ただ、全く何もしない場合に比べると拘縮の程度もましなのではないかな。
素早い動作ではなく、ゆっくりとしっかり、痛みのでないようにゆっくり動かすことが肝心です。
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