訪問での関わりでこんなことがありました。評価が不十分っていう意見や見通しが甘いという指摘があるかもしれませんが、事実なので書いてみた。ほかの方の参考になれば幸いです。
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こんな利用者さんのこと
診断名は進行性核上性麻痺の男性の患者さん。
担当当初は歩行可能でしたが、徐々に右片麻痺様の運動障害が出現。歩行開始時にすくみ足、立ち上がり時に足部が内反、歩いていると徐々に右上肢が屈曲してくるっていうような症状が出るんだけど、上肢も下肢も随意性は良好。立ち上がり時や歩き初めに転倒のリスクが高くなってきたので、現在は介助歩行で移動。
運動時のみ片麻痺様の症状が出るんだけど、随意的なコントロールが難しいってわけではない。椅子座位なんかでは両上肢ともに上手に使える。
今回は、奥さんから
食事の時に、箸を上手に使えなくなってきて、食べこぼしも多い。最近じゃあ、自分で箸を使うこともしないから、介助して食べさせるようになってきた
っていうお話を聞いたので、食事の評価をすることになった。
お話を聞いたときは、訪問時間の残り時間がなかったので、翌週の訪問で食事場面の評価をすることを伝えました。
午後の訪問なので
「何か食べるものを少し用意しておいてほしい、お箸の使い方も見るので何か箸でつまめるものがあるといいんですけど・・・」
ってお伝えしておきました。
いざ、食事の評価
おひるごはんの残りを奥さんが小皿に入れて用意してくれていました。
お肉と野菜をいためたものと、千切りキャベツをそれぞれ小皿に入れて用意してくれていました。
そして、お箸でそれを食べてもらうことにしました。すると
お箸の操作はゆっくりで、少しぎこちないのですが、右手でお箸、左手で小皿を持って食べこぼすこともなく、上手に食べておられます。
奥さんは食べこぼし対策で、エプロンをつけてくれていたのですが、エプロンにこぼれることはありませんでした。
二つの小皿を全部食べて終えて、評価は終了。
奥さんの評価
いつもは、こぼす量も多いしこんなに上手にお箸を使いません。箸をうまく使えないから、だんだん動作がゆっくりになってきて食べるのをやめてしまうので、介助するんです。
私の評価
箸の動作は手指に力が入りすぎるために少し拙劣さが出るけど、両手の協調性もある。動作が緩慢になる以外は問題ない。嚥下もできている。
今日のような状態でいつも食べることができるなら、大丈夫。
でもね、奥さんとしてはたまたま今日だけうまくいったのかもしれないってことを言われます。確かにそうです、いつもうまくいかないのに今日だけ上手に食べられるなんておかしいですよね。
じゃあ、なぜ今日は上手に食べることができて、いつも食べこぼしが多くて一人での動作をやめてしまうのかってことを考えないと、これからの食事動作の改善は望めないんですよね。
普段の食事と今日の食事の違い
奥さんと、何がいつもと違うのかってことを考えました。
いつもの食事と、今日の食事で違うことっていうのがあったんですよ。
それは、
小皿におかずを分けている
こと
普段は、1人分のおかずを一つのお皿に入れて食卓に載せています。今日は炒め物と千切りキャベツを二つの小皿に分けて載せていましてた。
「小皿に分けるだけで違うのかなあ?」
って話をしていると突然奥さんが閃いたようです。
「そういえば、デイサービスの食事ではエプロン使ってないんです。
家の食事では食べこぼしが多いからデイの職員さんに
「エプロン持っていきましょうか」
って伝えたことあるんだけど、
「デイではほとんと食べこぼしないんですよ」
って言われたのよ。
デイの食事もきっと、おかずとかご飯とかいろんな器に盛って、1人分をお膳に載せている。家で食べるときは一つのお皿におかずを盛り付けている。」
おかずをそれぞれ複数の器に盛り付けることで、お箸で取りやすかったり、器を左手で持って、両手で操作できる。
だけど、大皿の場合器を持ち上げることは難しいから、お箸の操作だけで取り分けたり、つまんだりしないといけない分難易度が高くなる。だから、結果として箸操作が難しく食べこぼしが多くなっている。
お箸を持つほうの手だけの食事だと食べこぼしが多く、上手におかずをつまんだりできない。だけど、小皿を左手で持つとお箸でつまみやすくなる。だから上手に食べられる。
っていう結論を奥さんと導き出しました。
とりあえず、今日以降の食事でお皿ごとに盛り付けることを提案して、本日の訪問を終了しました。
これでうまく食べられるようになるかどうかは、様子を見ないとわかりません。
たまたま良かったってこともあるし、上手に食べられた要因が小皿に小分けするってこと以外にもあるかもしれないからね。
今回のことで反省したこと
デイサービスでの食事の様子の情報を知っていれば、もっと早く解決できたのかもしれません。だってデイサービスではエプロンをつけずに食べておられるのですから。
普段の訪問リハビリ場面では、歩行時に上肢が屈曲しやすいのですが、座位の場面では随意性が良好であったので、奥さんから教えていただくまでは食事の問題にまで考えが及んでいませんでした。そこのところも反省すべきことです。
作業療法士なのですから、もっと生活のことにまで考えを広げておくべきでした。
結果オーライでは間に合わないこともあるのです。
反省して次回の訪問の時に食事の様子を確認です。
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