このシリーズは久しぶりの更新ですね。小児の訪問リハビリで家族に伝えたいことはたくさんあるのですが、その中の一つは「私が気づいたことを家族も気づいているのか?」ってこと。私も気づいていて家族も気づいているなら、伝えなくていいのではないかって思うセラピストや看護師もいるかもしれませんが、決してそんなことはないのですよ。気づいていることも気づいていないことも合わせて伝えないといけません。
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変化に気づくってことが重要
大人や高齢者の訪問看護や訪問リハビリテーションの場合は、病気や障害を持つ前の状態「元気なとき」の状態を家族さんや本人さんは知っているので、その状態を比較対象としてイメージすることができます。
- 元気なときはこんなことができた
- だいぶ動くようになってきた
ってみたいに本人や家族も変化に気づくってことができることが多いですよね。でも生まれてすぐや、生まれながら障害を持ってきたりするような小児のケースの場合はその比較対象がないんですよね。
だから、成長に伴う変化や看護やリハビリによる効果などの変化に気づいてもらいにくいことが多いと感じています。
また、セラピストがプラスの効果が出ているなって感じていても家族さんが気づいていなかったり、逆に家族さんの気づいている変化にこちらが気づいていなかったりすることもよくある事です。
伝えて確認して共有する
だから、自分が気づいたことはプラスの変化であろうと、マイナスの変化であろうと伝えることにしています。そうすることで対象者さんの情報や状態について家族と共有することができるからです。
- そう言われてみれば、以前とちょっと違ってきてるな!
- 最近こんなことできるようになってきたのよ!
そんな変化を伝えたり聞いたりすることがとても重要なのです。そんなやり取りを通して家族さん、特にお母さんたちとの信頼関係が深まっていくんだと思います。
セラピストにとっては辛くても家族にとっては嬉しい事
私が経験したことです。
呼吸器をつけている超重症児の訪問のケース。2歳くらいからかかわっていました。
呼吸器ついていて、胃ろうもあって、随意的に動く部分もほとんどなくて、表情の変化も当初は全くわかりませんでした。
訪問開始して間もなくのころ、反射なんかの確認のために子供さんの手掌部分を指でこするような動きをしてみたり、手指で握ってもらいたくて手掌部分に僕の人差し指を入れて動かしてみたりしました。
だけどやっぱり反応がなくて、お母さんにも
「手指を握る反射も出にくいですね」
って伝えたところ、お母さんから
「そんなことないですよ、私の指はよく握ってくれますよ! 見ててください」
って言って私がやったように手掌の上に人指し指を持っていくと、何としっかり握るではありませんか!
僕の指は握らないんだけど、お母さんの指は握るんです。
だから、お母さんにとっては「指を握る」動作はできるって思っていたんだけど、それは反射的に握り返してくれるもんだと思っていたんですよね。
ところが、訪問リハビリとして私が担当することになって「同じように指を握らせる動作」を試してみたけどうまく握ってくれない。そのことに僕も驚いたけど、お母さんはもっと驚いたみたいです。なぜ驚いたのかというと
反射的に握っているのではなくて、握る相手を選んで随意的に握っている
可能性があるからです。随意的動かすことのできる部位もほとんどなくて、意図的にどんなことを表現しようとしているのかもなかなかわかりづらい重症なケースなんだけど、指を握る相手を選んでいる可能性があるってことが分かったんですよ。
その後お母さんは出入りしている看護師さんや、保健師さん、いろんな人の指を握らせることを試してみたそうです。
お母さん曰く『女性の指は握るみたいですよ!』
そうか、僕は男性だから握ってもらえないんだ。私にとってはちょっと辛い出来事ですが、でも新しい発見をしたお母さんにとっては大喜びの出来事。これも、訪問の場面で「握らない」って出来事を伝えたからこと分かった事実なんですよね。
たんに反射の検査として、把握反射【-】としてカルテに記載するだけで終わっていたら気付かなかったと思います。
お母さんにとって当たり前の出来事であっても、実はすごい事だったってこともあるんですよね。
それ以来良い事であっても、マイナスのことであっても家族さんには積極的に伝えることにしています。そうすることで、私が感じたり考えていたりすることと、家族さんが感じたり考えたりすることに誤差が出にくくなるのではないのかな。
しっかりと伝えること、これが家族、小児では主たる養育者であるお母さんとの距離を縮めるの必要なことだと思っています。
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