病院での症例検討会のこと3「生活期で働いている作業療法士の視点での、退院に向けた目標設定や入院中に実施・検討すべきアプローチのこと」

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病院での症例検討会のこと1 「指導するときのポイントや考え方」(2022.5.16)というコラムで書いた、指導のポイントのそれぞれについて解説をしているコラムです。

6年以上にわたり、月1回の非常勤勤務で、症例検討会での教育・指導に関わっている経験から症例検討での指導のポイントとについて書いているシリーズコラムです。

前回は
症例発表そのもののすすめ方や発表のポイント
を書きました。

今回は

生活期で働いている作業療法士の視点での、退院に向けた目標設定や入院中に実施・検討すべきアプローチのこと

について書いてみます。

このコラムはシリーズコラムです。そのほかのコラムはこちら
セラピストへの教育シリーズ

生活期で働いている作業療法士の視点

私は通所リハや通所介護、訪問リハや訪問看護事業所などで非常勤掛け持ちで働いている作業療法士。月1回のみ病院さんの症例検討会のサポートをしています。

回復期リハ病棟に入院する患者さんの多くは、自宅に戻るか施設に転院・転所することになります。私が普段かかわっている生活期の領域に戻る入院患者さんの症例検討なのですから、退院に向けてより具体的なアプローチをするためにも、生活期で働くセラピストの視点は回復期リハ病院で働く作業療法士には必要になります。

入院時点で要介護認定

症例検討のサマリーには「退院に向け介護保険申請中」とか「要介護3」などの情報が記載されていることがあります。

症例検討会の多くのケースは、その時点では「未申請」の方なのですが、時々すでに要介護認定済みの方もおられます。

この部分をあまり注目していないセラピストさんもいます。だけど、入院時点で要介護認定を受けている状態であれば、リハの目標設定でどのような状態を目指すのかって部分も変わってくると思います。もともと介助が多い状態で生活してきた方が、退院時に介助なしの生活に戻ることは難しい。同じ疾患・同じ年齢であったとしても到達すべき能力や機能に違いが出る。

だから、元々どのような生活をしていたのかという部分をきちんと把握することが必要になります。そのうえで目標を設定することが肝心。

自宅と施設のこと

退院先が自宅の場合と施設の場合でも、入院中に練習すべきことは少し異なる。

「見守りで可」という動作の場合、自宅退院で日中独居であれば危険性が少し高いけれど、施設では状況によっては見守り可能なこともある。

移動方法も、車いすが自走することができれば施設内の移動が可能となる。自宅退院で車椅子でスイスイ移動できるような家屋は少ないので、車いす移動よりも伝い歩きなどの練習を行うほうが実用性が高まる。

このようにADLのことを中心に考えても、施設に退院するときは施設でできることやできないことを考えないといけないし、自宅退院の場合は家屋状況やマンパワーを考慮することが必要になってくる。

施設だからと言って病院と同じような医療・介護を提供できるようなところはないので、それぞれの施設状況を把握できるならそのほうが望ましい。

歩行器歩行のこと

平行棒で歩行練習して、歩行器使って練習するというパターンもあるのかな?

歩行器歩行が自立していてるケース。

施設に転所するとき、その歩行器は誰が用意するのでしょうか?

老健などに入所の場合、施設に貸し出し用の歩行器があっても病院で練習しているものとタイプが違うかもしれない。貸し出し用がない場合もあるかもしれない。

自宅退院の場合、歩行器の種類にもよるかもしれませんが、実用的に移動できなくなる可能性もある。

退院先の状況によって歩行器歩行の練習が必要なのかどうかということは検討すべき課題。

また同様に、伝い歩きのことも検討すべき課題の一つ。

そんなに大きな家ではない場合、伝い歩きは有効な移動手段。屋外では杖に頼っていても自宅では伝い歩きとい
うパターンは生活期ではよくあること。

杖で不安でなら、伝い歩きの練習にトライしてみることを検討してみてもよいかもしれない。

病院でのリハビリテーションを実施している環境と、退院先の環境は異なることをきちんと理解してリハビリテーションを実践することが必要。

まとめ

病院リハビリテーションの目標設定やアプローチを検討するためには、退院後の生活状況の把握が重要になる。

そのためには、生活期での経験を持つ作業療法士として症例検討会での指導の役割を担うものとして、その部分を交えながら助言することは非常に有益だと感じている。

ベテランのスタッフであっても在宅の生活状況はなかなか把握できないこともあるので、生活期リハで掛け持ち勤務をしている経験を生かしたアドバイスをしています。

私は非常勤掛け持ちの作業療法士であり、コンサルタントなどではありません。
しかしこれまでの経験を活かしながら、病院のリハや生活期領域のリハ関連部門に対して、これからのリハビリテーション部門の在り方などに対してアドバイスや助言をすることはできると自負しています。
収益を上げるための助言はできませんが、より良いリハビリテーションを提供するためにはどうすればよいかということを、一緒に考えることはできると思います。

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